医療・福祉関係者のみなさま

2010年2月15日

フォーカス 私たちの実践 緩和ケアチームを立ち上げて 高知生協病院 ターミナルの心身ささえる 患者と家族の思い出づくり

 高知生協病院(一一四床)では緩和ケアチームを立ち上げ、患者に寄り添うさまざまな活動を行っています。谷岡節美さんが、第九回学術・運動交流集会で発表しました。

 内科・外科・整形外科を受けもつ当病棟(六〇床)には最近、終末期の患者が増加しています。そこで二〇〇七年四月に病棟で緩和ケアチームを立ち上げ、その後院内でのチームを立ち上げました。
 活動内容は、(1)ケア検討会、学習会の参加・実施、がんに関する講演やフォーラムへの参加、(2)週一回のチーム会議、(3)病棟内のモルヒネ使用に 関する意識調査、(4)退院に向けての援助、ケースカンファ、退院後の訪問などです。
 そのほか、手探りでしたが、患者と家族の思いに寄り添う「思い出づくり」にとりくみました。

「最期のお化粧は娘に…」

 Aさん(女性)は肺がん、転移性骨腫瘍でした。おしゃれで明るい性格のAさんは面談で「最期の 化粧は娘にしてもらいたい。先に逝った両親が自分をすぐわかるよう、きれいになって帰りたい」と話しました。そこで最期に備え、死化粧、衣装、清拭の方法 を決め、担当者の誰にでもわかるように文書にしました。内容は「本人のご希望です。シャンプー、清拭、死化粧は娘さんといっしょに。化粧品は本人の物で。 ドレスを着て帰ります。義歯を挿入し、やせて見えないよう綿を含ませふっくらした感じにしてください」(担当看護師より)。

「妻にドレスを」

 Bさん(男性)は肝臓がんの終末期でした。「妻には感謝している。でも、照れくさくてその言葉が出てこない」と話しました。そこで、妻と子に手紙を書くよう提案しました。しかし病状が悪化し、代筆しました。
 Bさんに「妻に何をしてあげたい?」と聞くと、「できればドレスを着せたい」と。そこでチームに提案し、せっかくドレスを着るのなら、と妻の了解を得て、病院で「プチ結婚式」を催しました。

「隣人に感謝の贈りものを」
「飼い猫との再会」

 Cさん(男性)は肝硬変、腎不全で余命数カ月。一人暮らしのCさんは、「自分の心のささえだった隣人(女性)に感謝したい」と希望しました。照れ屋のCさんといっしょに、お花好きの隣人へ、押し花と思いを込めた詩、写真をアルバムにして贈りました。
 Dさんは胆嚢がんの末期。娘さんは「家に帰してあげたい」と希望しましたが、病状から困難でした。そこで、飼い猫との対面を提案。ベッドのまま病院の玄 関へ行き、猫と再会しました。もう傾眠状態でしたが微笑みがこぼれ、娘さんからも感謝されました。

笑顔のサイクル

 私たちは「思い出づくり」の中で、患者・家族と喜びや悲しみをともにすることができました。
 終末期では、身体的ケアとともに、心のケアも重要です。医療の現場では、業務量の増大、マンパワー不足によって、十分な看護が展開できない状態がありま すが、その中でも、看護師と患者・家族の思いが一体化したときに、看護の醍醐味と達成感を味わうことができます。
 「患者・家族の思い」から出発し、「日々のケアと面談」を通じて、その思いに応え、「患者・家族の笑顔」から「看護師の充実感と笑顔」が生まれる。これを私たちは「笑顔のサイクル」と呼んでいます。
 忘れられない思い出は、家族が患者の死を受容するうえでも、必要なことと感じています。

(民医連新聞 第1470号 2010年2月15日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ