民医連新聞

2002年7月1日

「低所得者に厳しい」介護保険改善を/門 祐輔(京都・田中診療所所長)

2000 介護実態調査がしめしたもの
日本リハビリテーション医学会報告(2)

「低所得者に厳しい」介護保険改善を
門 祐輔(京都・田中診療所所長)

 「順調に推移」との政府の認識とは異なり、現場は矛盾がいっぱいです。
 全日本民医連が行った2000年介護実態調査は、内容や例数が豊富な全国調査であり、厚労省でさえ実施し得ていないものです。1年以上たった今でも価値 が変わっていないばかりか、調査結果の示すものはいっそう重要性を帯びてきました。この結果そのもの、あるいは各地域のデータを加えて分析した結果をさま ざまな場で示し、介護保険の抜本改善のために役立てていくことが大切です。
 今回の学会発表では、本人の年収に占める全介護費用と利用料の合計の割合を示しました。収入の少ない人では、負担割合が大きくなっています。介護保険利 用者本人の年収は100万円未満が過半数です。これら多数を占める低所得者にとって、介護保険が厳しい制度であることを示しました。(図1)

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 次に、介護保険実施前から介護を受けていた人の、実施前後の費用を比較しました。実施前より増加した人が75%です。中には3万円増えた人もいて、月の平均では、5594円から1万4640円(2.6倍)になりました。
 「介護保険実施により介護サービスの利用が増えた」と言われていますが、事実でしょうか。サービスが増えたと答えた人は36%。その理由をよく見ると 「介護度が高くなったため」「介護者の条件が悪くなったため」とあり、増やさざるを得なくなったことが読みとれます。逆にサービスを減らした12%の人で は、その理由のトップは「自己負担が増えたから」です(図2)。ここでも、経済的に苦しい人にとって介護保険は厳しい制度だということが明らかです。
 興味深いことは、本人が低所得の場合は要支援・介護度1のように介護度が低く、所得が比較的高い層では介護度4、5など高いことです。世帯収入で見ても 同じ傾向があります。これはどういうことでしょうか。理由の一つは、低所得のために介護度が高くなっても介護度にみあった保険料・利用料が払えず、入院・ 入所するからです。これも重大な問題です。
 また独居者は非独居者よりも介護保険の利用率が高くなっています。介護保険は、同居者がいるか否かに関係なく介護度や支給限度額を設定していることも矛盾の一つです。さらに利用単位については個々にばらつきがあります。
 これらが示すことは、現行の介護保険制度が低所得者をいっそう圧迫する矛盾をもつことです。低所得者に対する減免制度の拡充が必要です。介護保険制度の上限額設定、認定制度は不要です。介護保険は抜本的な改善が必要です。
 なお「民医連の院所を受診する人には低所得者が多く、全国の平均的実情とやや偏りがある」ように言われる場合があります。しかし、京都民医連の調査と京 都市が行った調査を比較したところ、統計的に差はありません。また、保険段階の区分も有意差はありませんでした。つまり京都市内で介護保険を利用している 人たちは京都民医連の対象となった人と同じく、その約半数が保険段階2以下の低所得者なのです。

(民医連新聞2002年07月01日/1280号)

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