医療・福祉関係者のみなさま

2010年6月7日

フォーカス 私たちの実践 通所介護の音楽療法で効果 富山・在宅福祉総合センターひまわり 馴染みある音楽に合わせ心も体も表情豊かに

 富山市の「在宅福祉総合センターひまわり 通所介護(定員六〇人)」では、開所した二〇〇二年八月から、月二回、音楽療法を行っ ています。近くのショートステイ利用者も含め、参加者は毎回七〇~八〇人と多く、認知症のある利用者も参加し、普段は表情の乏しい人もこのときばかりは明 るく、体の動きも積極的になるなど、変化が見られます。〇九年秋の学術・運動交流集会(群馬)で、小河孝英さん(社会福祉士)がとりくみを報告しました。

音楽療法士のかかわり

 音楽療法は多くの利用者が楽しみにしています。利用者の介護度は要支援から要介護5までと幅広 く、外部の音楽療法士との連携を密にして行っています。利用者の介護度や年齢に応じてプログラムや使う楽器を検討し、施設での行事予定なども事前に伝え合 い、演奏会の内容を決めます。
 演奏が始まると、職員は利用者のようすや状態を観察・把握し、記録します。終了後には音楽療法士と職員が話し合い、今後のプログラムや日常業務でのかか わり方などに生かすようにしています。音楽療法の効果の新たな発見につながった事例を紹介します。

太鼓をたたいて

 九五歳のAさん(男性)は要介護4で、週六回の通所介護を利用していました。認知症があり、発語が聞き取りづらく、意思疎通はできるものの、他の利用者とのコミュニケーションは困難です。
 歌を好み、お風呂で気持ち良くなると、富山で有名な「おわら風の盆」を口ずさみます。普段は静かに自席で過ごすAさんですが、音楽療法のときは、ほかで は見られないような明るい表情になり、音楽に合わせて手拍子をしたり、体を揺らしたりします。
 そこで、音楽療法士から、「民謡の好きなAさんに太鼓をたたいて盛り上げてほしい。Aさんも活気が出るのでは」と提案があり、Aさんにお願いしました。 実際に演奏してみると、Aさんは自信たっぷりに太鼓をたたき、職員も驚くような大きな音を出し、全体の演奏をリードしました。
 音楽療法が引き出したAさんの能力の発見でした。これを機に、音楽療法を積極的に機能訓練に生かしていこうと決めました。

心と体で楽しむ

 Aさんは歩行にふらつきがあり、車イスを利用しています。音楽療法で気分が高揚したときは表情もやわらぎます。その応用で、平行棒での機能訓練でも、職員が一緒に歌ったりすると、大きく足を上げて積極的にとりくむようになりました。
 Aさんの経験を通して、ふだんの集団体操のときも、馴染みある民謡などに合わせて体を動かすようにしました。心身ともに楽しめるようになり、利用者は「音楽で心が躍っている」ようです。
 また、楽しく無理なく手の挙げ伸ばしができるという点で、楽器を使うことは有効です。今後の課題は、音楽療法について他職種にも理解してもらい、連携を 強化し、利用者一人ひとりに見合った機能訓練につなげていくことです。

家族からも好評

 音楽療法を用いて、家族交流会も開きました。利用者のみならず、家族、職員ともに、みんなが笑顔で楽しいひとときを過ごしました。家族からも、「ぜひまた参加したい」と。音楽療法をひとつの切り口にして、家族や地域に開かれた通所介護をめざしていきたいと思います。

(民医連新聞 第1477号 2010年6月7日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ