医療・福祉関係者のみなさま

2010年6月7日

駆け歩きレポート(40) 訪問 患者の生活、地域のこと 身をもって学んだ 人権をまもる月間まとめ交流会 神奈川民医連

 「気になる患者訪問」で学んだことや課題などを共有しよう、と神奈川民医連は 五月一九日、「人権をまもる月間まとめ交流会」を開き、約八〇人が参加しました。全事業所に未収金や中断、短期保険証などの患者訪問を呼びかけ、全員が訪 問活動に出た診療所もあります。交流会では、生活困難の広がりや、気づいて行動することの大切さを、あらためて確認しました。(小林裕子記者)

 交流会は今年で二回目。一九日までに集約されたのは約一〇〇事例で、昨年の三倍です。それだけ「社会の矛盾が激化し、職員の活動量が増えている」と言えます。各事業所から活動や特徴的な事例が報告されました。

1週間食べてない青年

 さがみ生協病院(神奈川北央医療生協)の川原可子さんは「相模原派遣村」(三月二六日)のとり くみを報告しました。実行委員会がハローワーク前で呼びかけ、三三人が相談に来ました。二〇~三〇代が多く、中には「一週間何も食べてない」人も。「健康 より就業、生活基盤が先」という切迫した状況だったと話しました。

毎週定例日に訪問

 神奈川診療所(柿葉会)では毎週火曜に中断者を訪問しています。宇野幸穂さんは、「医療費が高い」という訴えから収入減などの状況を聞き、無料低額診療の利用や生活保護受給につなげた五〇代男性のケースを報告しました。
 同診では中断者をカード化し、ハガキ・電話・訪問の振り分けをチームで行い、訪問する職員を勤務表に組んでいます。

未収金をきっかけに

 汐田(うしおだ)総合病院(横浜勤福協)の職員は、未収金、とくに「自費受診」の患者 に着目しました。「自費の理由が、保険証がないためとわかれば、同院の無料低額診療などにつなげ、適切な対応が可能になる」という思いからです。しかし、 取り立てのように思われて、訪問しにくい場合もあり、「とにかく家を見に行こう、ようすがわかれば何か方法が見つかる」と仲間に呼びかけ、行動を始めてい ます。

出資金払い戻しの理由…

 京町診療所(川崎医療生協)では、一二月、一月と続けて出資金の返還を求めてきた女性の相談に乗りました。年金が少ないために働いていた八〇歳の夫が倒れたという事情がわかり、家賃の減免手続きなどを支援しました。
 同診では、月間で全職員が訪問活動に参加しました。その報告会を組合員さんと開きました。
 市村進さんは「全員でとりくむのが伝統」と発言しました。

生活困難が広がっている

 「虐待に気づくのが遅かった」「連絡が途絶えた」など残念なケースも報告されました。しかし、訪問活動を支援につなげた患者・利用者も多数です。「患者の生活を、身をもって学ぶ機会として大切にしていこう」という発言に拍手が湧きました。
 一方、国保行政で新たな問題がもち上がっています。川崎市が、全国に例がない八日~四週間の「短期保険証」ならぬ「受療証」を発行しているのです。協同 ふじさきクリニックの木下博志さんは、この日の市側との懇談内容を報告しました。「滞納の制裁」の疑いがありますが、市側は否定しています。同クリニック では受療証を持参した患者の相談に乗り、市と交渉を続ける方針です。
 記念講演は川崎市の中学校の養護教諭。保健室に来る子どもの健康問題を話し、生活困窮と結びついていると指摘しました。「貧困だけでなく不健康も親から 子へ連鎖している」と話し、医療機関との連携に期待を寄せました。

(民医連新聞 第1477号 2010年6月7日)

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