医療・福祉関係者のみなさま

2010年6月21日

フォーカス 私たちの実践 学校・地域で「命の教育」 京都民医連中央病院 命に接する助産師として思春期の子へ働きかける

 人工妊娠中絶は二〇〇一年をピークに減少に転じましたが、一〇代の妊娠中期の中絶は依然として増加傾向です。京都民医連中央病院 では、助産師が中心となり、学校への出張講演や病院見学の受け入れなどで、思春期の子どもたちへの「命の教育」を続けています。昨年の第九回学術運動交流 集会で、助産師の福島法子さんと川原初恵さんが報告しました。

 当院では、一〇代の妊娠中期での中絶の割合が多いことを重視しました。個別のフォローと同時に、地域や学校からの要請にこたえ、思春期の子どもたちに「命の大切さ」を発信してきました。
 一つは、地域の児童館で行われている「中高生と赤ちゃんのふれあい事業」への協力です。妊婦体験スーツを着て妊婦のしんどさを知ったり、人形を使った赤ちゃんの沐浴体験をしています。
 別の児童館の企画では病院見学を受け入れ、九人の中高生が分娩室や新生児室を見学しました。出産後まもない母子の部屋で授乳のようすを見て、実際に赤 ちゃんを抱っこさせてもらい、笑顔のあふれる時間を過ごしました。中絶の説明もしました。見学中に分娩が始まった産婦がいて、参加者にも緊張が走る場面も ありました。
 「赤ちゃんが生まれるにはたくさんの人のささえがあったんだと気付きました。人はやっぱりスゴイと思います」などの感想が寄せられました。一生懸命生きている命そのものの赤ちゃんと接し、感動したようです。

思春期に命を学ぶこと

 中学一年生八人が、「生命の授業」の一環で病院見学にきました。助産師から、「助産師になった理由」や「一番嬉しかったこと」などを聞きました。
 中学生たちは見学のようすをDVDにまとめ、文化祭で発表しました。「生まれて初めて赤ちゃんを抱かせてもらい、この感動は忘れません」と語っていまし た。私たちも文化祭に招かれ、感激しました。まっすぐに受け止める感性のある思春期にこそ、「命の尊さ」を学ぶことが大事だと感じました。

具体的な知識の普及を

 教職員や父母が参加する地域の教育懇談会や学校の保健研修会でも、「思春期の心と体」について 講演しました。人工妊娠中絶についてや、性教育バッシングの実態、性教育の重要性などを語りました。学校現場からは、「バッシングに苦労している」などの 悩みが出され、母親からは、「男の子の行動が理解できず叱ってばかりいたが、生理的なことがわかった」との感想が出されました。ピル、性感染症、特にクラ ミジアやエイズなど、医療職から具体的な知識を普及することが必要だとわかりました。
 中学三年生二四〇人を対象に講演会も実施しました。妊婦さんの協力で、胎児の心音を聞いてもらい、母親になった体験談などを語ってもらいました。「心音 を聞き、命を身近に感じた」「中絶という結果にならないようにしたい」「正しい知識と間違った知識の区別がついた。命の重さを感じた。軽い気持ちで性行為 したくない」などの声が寄せられました。最初は恥ずかしそうに下を向いていた中学生が、次第に一生懸命聞くようになった姿が印象的でした。

「命の現場」から伝える

 こうしたとりくみを通じて、日々、命の誕生と接している助産師として、思春期の子どもに働きかけて いけると実感しました。赤ちゃんの生命力は感動的です。思春期の子どもたちが「自分も同じく大切な存在だ」と気づくことは、自己肯定感を育み、自信をもっ て生きる力の一助になると思います。同時に、教員や親、地域の人たちにも、現場からの情報を伝え、ともに見守っていくことが大切です。今後も地域や学校の 要請に応えていきたいと思います。

(民医連新聞 第1478号 2010年6月21日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ