民医連新聞

2007年2月19日

08年改変の住民健診 対応は 「新たな特定健診・特定保健指導制度に向けての検討集会」ひらく(全日本民医連)

 〇八年四月からの健診制度は、メタボリック症候群と糖尿病に特化し、アウトソーシング化されるなど、大幅に改変されます。全日本民医連は二月三~四日、東京で「新たな特定健診・特定保健指導制度に向けての検討集会」を開き、四四県連から二八三人が参加しました。

対応急ごう

 長谷川吉則理事(保健予防・労働者健康問題委員長)が基調報告し、制度の概要と今後の対応にふ れ「問題点は多数ある。しかし民医連の出番でもある。病気への社会的視点(生活と労働)をもち、共同組織とともに地域の健康づくりをすすめてきた経験を生 かし対応しよう。緊急に対策チームを設置し、全事業所が健診を受託できる条件を整えよう。保険者・自治体に、保健予防施策が後退しないよう働きかけよう」 と呼びかけました。
 日本高齢者運動連絡会事務局長の篠崎次男さんが講演。新健診制度を「病気の自己責任論」はじめ、多様な角度から分析し批判しました。ハイリスクアプロー チの限界を指摘し、健康格差を放置してはならない、「地域まるごとの健康づくり」の具体化が必要、と説き、「私たちの健康づくり活動は、自分を変え、周り を変え、社会を変える運動」と激励しました。
 広瀬俊雄医師は仙台錦町診療所・産業医学センターの活動を紹介し、「新制度では長時間労働がもたらす健康破壊をなくせない」と警告しました。
 東京土建国保の北村博昭さんが、保険者の立場から、対応と課題を報告。医療生協さいたまの渡名喜(となき)正さんが、モデル事業を視察しての考察を報告しました。

たたかいも

 〇三年にメディカルフィットネス「VIVID(ビビ)」を開始した庄内医療生協の松本弘道専務 が、健康づくり事業の戦略を報告。「健康づくりは、人間が本来あるべき姿のため。自己責任と言われ、泣く泣くフィットネスする姿は非人間的だ。生きがいの ある平和な社会の実現=健康文化を広めるロマンと、経営のソロバンのバランスを取っていきたい」と語りました。
 石川民医連会長の服部真医師は「メタボリック症候群より、長時間労働など不適切な環境をなくす方が先決」と指摘しました。不安定雇用や失業も心身の疾患 に強く結びつき、長時間労働の人ほど糖尿病や心疾患になりやすいとデータを示しました。
 フロアから「メンタル面への問診は?」、「がん検診は?」など、二〇以上の質問が出ました。また「制度実施は〇八年。その前に二大選挙がある。生活実態 を明らかにし、地域の声を結集してたたかおう」との発言もあり、拍手が起きました。

3月の予定

3~4日 医学生委員長会議(静岡)
3~4日 第3回医療安全交流集会(福岡)
10日 地域包括支援センター全国交流集会(東京)
16~17日 第14回定例理事会(東京)
17~18日 共同組織委員長会議(東京)
31日~4月1日 第2回医療倫理委員会活動交流集会(福岡)

 

特定健診・特定保健指導制度とは

【概要】

 市町村国保・国保組合・健保組合・政府政管健保など保険者は健診と保健指導をアウトソーシング (外部委託)。委託先の条件は、人員体制・施設・設備(プライバシー確保・救急対応・敷地内全面禁煙など)・検査の精度・結果の情報管理・利便性・内容な ど基準の案が出されている。日本医師会は受託先のとりまとめを表明。健保の被扶養者は、国保の委託先が利用でき、居住地で健診が可能になる見通し。
 目的は「医療費の削減」で生活習慣病の有病者・予備軍の25%削減(2015年)。内臓脂肪症候群(メタボリックシンドローム)と糖尿病対策に特化した 検査項目は老健法の基本健診より少なくなる恐れがある。保健指導は、情報提供・動機づけ支援・積極的支援、に分けたプログラム案が出され、モデル事業が行 われている。健診受診率・保健指導の実施率・メタボリックシンドロームの減少率によって、新たに創設される高齢者医療保険にたいする保険者の拠出金 が±10%の幅で増減するペナルティ制度が導入される。財源負担は図のように変わる。
 (詳細は厚労省のホームページ等を参照)

【問題点多く】

1.健診の目的が病気の早期発見・早期治療、健康増進から外れ、医療費抑制の手段に変質させられる。
2.アウトソーシングは保健予防の市場化の危険をはらむ。
3.対象が40~64歳に制限。65~74歳は、地域支援事業(介護予防)の対象として「要検討」。75歳以上は高齢者医療制度の「任意事業」とされ、除外される恐れがある。
4.老健法にもとづく基本健診にあった項目のうち、心電図・眼底検査・検尿・貧血検査が「医師の判断で実施する精密検査」に。胸部レントゲン検査は除外になる。
5.保険者は、レセプトと突き合わせ、医療費削減の面から、健診・保健指導を評価。高額レセプト・人工透析のレセプトを分析し、保健指導が重症化予防、合併症予防に役立っているかを確認する、としている。
6.職場健診は、事業主が保険者に委託できる。なお、事業主が実施する場合は、保険者への情報提供が義務づけられる。
7.「健康自己責任論」のもとで、健診や保健指導を受けない人へのペナルティが強化される恐れがある。
8.労働者が健康を損ねる要因となる長時間労働や労働環境から目がそらされ、事業主の責任が弱められる恐れがある。
9.無保険の人、保険料(税)滞納者などが、健診から排除される恐れがある。
10.健診費用の利用者負担が不明確。負担が重い場合、受診率が低下する恐れがある。
(集会の基調報告・「新たな健診・保健指導制度への視点、たたかいと対応の課題について」『民医連資料』06年10月号参照)

(民医連新聞 第1398号 2007年2月19日)

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