民医連新聞

2007年2月19日

08年からの検診 医療費抑制ではなく住民の健康づくりに 自治体と懇談すすめる 医療生協さいたま

 住民健診が大幅に変わる「08年問題」。老健法によって自治体が実施してきた基本健康診査がなくなり、「特定健診・特定保健指 導」が保険者に義務づけられました。数かずの問題が指摘され、自治体の健康施策が後退する恐れもあります。医療生協さいたまでは、この問題を重視し、〇六 年度の自治体との懇談のテーマに設定、事業所・支部の所在する自治体に要望書を提出しました。懇談では職員・組合員が「地域まるごと健康づくり」のとりく みを伝え、情報を集め、意見交換しています。
(小林裕子記者)

毎年、健診で懇談

 行(ぎょう)田(だ)協立診療所と医療生協支部は毎年春に、健診問題で行田市と懇談していま す。今年度は一月二六日に。 冒頭、行田地区で医療生協が実施している「健康づくり活動」をパワーポイントで紹介。その中では健診受診を促す「スタート集 会」、健康教室、セラバンドをつかった運動、町内の自治会に出前で行く健康チェックなど、一五分ほど説明。市の出席者は笑顔で聞いていました。
 「08年対応」については、「まだ詳細がわからない」ながら、「市が保険者である国保は医療機関に委託」とその条件を示しました。また「生活保護の人は 無料」でも、「国保料が未納の人は、受診できるが無料とはいかない」と。この発言に参加者は「えっ?」。
 この日は健診受診率も議論に。市側は「二二%(〇二年度)から三〇・六%に上がった」と報告しましたが、組合員さんらは「土日・夜間の対応や農村部の交通手段の確保などで、もっと受診機会を広げて」と提案しました。
 実は、受診率が上がったのは、集団健診方式から医療機関委託に切り替えたためです。「日が限られ、会場に行列という状態を変えてほしい」と診療所と組合 員さんが何年も要望し、市民とともに運動する中で実現しました。以前は、市の担当者が「受診率なんてどうでもいい」と発言し、受診率は一五%程度でした。
 懇談を終えて、関口共子事務長は「国保料未納者の件は課題。この日は深く追及する場でなかったけれど、次の話し合いに備えなくては」と。支部長さんらも 「市の財政負担はどう変わるの?」「受診率は上げないと」など意見交換。〇七年度の懇談に向け「学習しなければ」という相談に。
 行田地区理事の落合まち子さんは「生活密着型で楽しいことをやって健康増進をする医療生協の役割を知らせたい」と話しました。

プランづくりから

 医療生協さいたまでは、いま方針案「地域・職場まるごと健康づくり戦略~医療生協の優位性を発揮した健康づくり健診の発展をめざして~」について職員・組合員に議論を呼びかけています。
 〇四年に「健康づくり戦略」策定プロジェクトを立ち上げ、作業中に、厚労省が新制度案を発表。その柱は、健診を医療費抑制の手段にするもの。これに対 し、プロジェクトは「住民の健康づくりに貢献すべきもの」という立場で、策定を急ぎました。また、四病院・九診療所すべてでアウトソーシング受託基準を満 たすよう、内部的なネットワーク形成を方針化しました。
 プロジェクト責任者の牛渡君江さん(看護部長)は、言います。「健康は本人が主体的につくるもの、これには賛成です。そして、健康に生きることは憲法に 保障された権利なのです。ところが自己責任を強調したり、医療費を抑えたら、実現できるでしょうか? 制度のデメリットを減らすよう働きかけることが大事 です。自治体は住民の健康を増進させる責任があり、社会資源を活用したいはず。そこに訴えて、手をつなぎ健康づくりをすすめる団体として、生協を認知して もらう必要があります」 。
 医療生協さいたまの「健康づくり戦略」はのべます…「健診時代の到来は、医療生協が得意とする『健康づくり』『生活見直しチェック』を医療生協の内外に拡大するチャンス」 。しかし「『努力した人』と『しない人』を切り分け、肥満や喫煙、運動不足などの人に、保険給付に差をつけると伝えられており、公的責任を放棄した健康の自己責任論の導入に対し、監視する必要があります」 。
 病気の背景にある過重労働や生活破壊にも目を注ぎ、対応し、共同組織とともに運動を。とりくみは進行中です。

(民医連新聞 第1398号 2007年2月19日)

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