民医連新聞

2007年3月5日

フォーカス 医療・福祉の実践(11) 電子カルテを使用して医療安全の向上はかる 総合病院岡山協立病院

 電子カルテ導入には、光と影が指摘され、入念な計画と対応が必要で、多くの事業所が苦労しています。総合病院岡山協立病院では、 沖縄協同病院と協力して、電子カルテを導入。それを機に医療安全の向上にも使えるシステムの検討をすすめました。副看護部長、金谷純子さんからの報告で す。

 「電子カルテで待ち時間が激増し、患者さまが怒ったらどうしよう」、「医師や看護師が『やってられるか!』と、システムを打ち壊しに立ち上がったらどうしよう」 。 そんな不安をかかえながら、二〇〇六年一二月に二病院・四診療所で電子カルテが動き出しました。
 これに先だち、〇六年一月にオーダリングを開始、九月に外来で電子カルテを稼働。予約患者さまの調整はしたものの、ほとんどトラブルや診療の混乱もな く、順調にすすみました。開発元の沖縄協同病院とメディコープ沖縄のシステムエンジニア(SE)、当院システム課、医師をはじめ職員の協力のおかげです。
 当院の電子カルテの特徴は、二病院・四診療所の患者IDと医療生協の組合員番号を同じく統一したことです。共通の診察券で法人内のどの院所でも利用可能 になり、またどこで診療や健診を受けても、情報が共有できるようになりました。ふだんは診療所を受診し、急病で病院を受診しても、過去の検査結果や投薬、 カルテの内容がすぐに分かります。また組合員情報も分かります。
 ただし、個人情報保護方針にもとづき、公開・非公開を患者さまが選択できるようにしています。

患者・薬の取り違えを防ぐ

 今回のシステムでは、特に医療安全に配慮しました。第一に、患者さまや薬品の取り違えが起こらないように工夫しました。
 外来処置室では、採血管ロボットから、採血指示のバーコードがついた採血管と注射ラベルが一つのトレイにセットされて出てきます。担当看護師は、本人持 参の基本カードと自分の職員証をバーコードリーダーで読み取ります。そして患者さまに名乗っていただき、確認したうえで、検査や注射を実施します。
 病棟では、患者さまのリストバンド、点滴ボトル、職員証のバーコードを読み取り、確認します。
 また、薬剤やアレルギーチェックを電子カルテでできるようにしました。たとえば抗生剤をオーダーすると、アレルギーの確認画面が表示されます。併用禁忌 薬剤や重複投与の指示を入力すると、危険を知らせる表示が出ます。
 放射線検査時の造影剤の禁忌も表示するようにしました。特定の病名(前立腺、緑内障など)で注意すべき薬剤もオーダー時に確認画面を表示し、注意を喚起しています。
 電子カルテを「便利な道具」にするため、SEたちが努力し、時間はかかりましたが使い勝手のいいシステムになりました。もう一つの特徴は「とにかく速 く! レスポンスタイムは一秒以内!」。ストレスにならないようにしました。
 今後は、クリティカルパスやDPCへの対応も行う予定です。また、第三者のシステム評価も受けることも検討しています。
 電子カルテ(コンピュータシステム)は、キチンとした企画、それを具体化し実現する開発、完成したシステムを使いやすくする保守が大切です。これからも職員の力が試されていると思います。

(民医連新聞 第1399号 2007年3月5日)

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