民医連新聞

2007年3月5日

地域で医療を守る(6) 特大版 ”こんな自治体やっぱり変えたい”

 シリーズ「地域で医療を守る」、今回は特大バージョン第一弾です。統一地方選挙を前に、地方政治の問題がクローズアップされてい ます。医療・介護の負担増や助成制度の廃止、増税など、国政が暮らしを圧迫しているいまこそ、地方自治体には「住民を守る防波堤」になってほしい。しかし 実態は…。東京、神奈川、青森からの報告です。

県民生活より大企業優遇 神奈川

 神奈川県の福祉・教育は、全国最下位クラスです。この間も、生活保護世帯の小中学生の修学旅行 支度金や中学卒業の祝い金を廃止。夏季と年末の慰問金をカット(各四〇〇〇円)し、「四億八〇〇〇万円も削減できた」と現知事は自慢しました。また、県立 高校を減らし、高校進学率がついに九〇%を割りました。その上さらに一一の高校が減らされる計画です。
 一方で熱心なのは、企業誘致のための土地購入や、工場などの建設を支援する「インベスト神奈川」計画。一〇年間で六五八億円もの財政支出です。これは全 国的にも突出した額で、二位の兵庫県(一〇四億円)をはるか後方に引き離しています。
 「企業を活性化すれば、雇用の拡大などの経済的波及効果が期待できる」が計画の根拠。しかし、助成の対象は、空前の大もうけをあげる大企業が大半。中小企業の配分はわずか六%です。
 知事は県内での米軍基地強化に関しても、「国の専管事項」として反対せず、米原子力空母の横須賀母港化を「政府もアメリカも安全だと言っている」と容 認。県議会では「憲法改正の機は熟している」という発言もしています。
 神奈川民医連が加盟する「平和ですみよい神奈川民主県政をつくる会」から、鴨居洋子さんが立候補する予定です。この「インベスト神奈川」計画を見直し、 県民の医療、福祉、教育などをもっと充実させる「県民の抱える困難の軽減」が公約。大企業に限度まで課税し、予算の配分を県民本位にすることで、十分に実 現可能です。現知事の松沢成文氏(民主)と、自民党の推す杉野正氏との三つ巴。今度の県知事選挙は、大企業優先か、それとも県民に暖かい県政か、が問われ ています。(中里龍夫・神奈川北央医療生協理事長)

「福祉はぜいたく」のかけ声のもとで 東京

 石原慎太郎都知事は、豪華な海外視察や飲食、自身の四男を起用した不透明な事業など、メディア でも話題になっています。しかし、問題はもっとある。「福祉はぜいたく」と言い放ち、総額九〇〇億円以上も医療と福祉を切り捨てています。一方、巨大公共 事業を増やし続けています。都政のムダ遣い見学ツアーに参加した横山 健記者がレポートします。

「オリンピック誘致」が巨大公共事業の口実に…オリンピック選手村とスタジアムをつくるという、臨海副都心に行きました。スタジアム予定地の狭さにびっくり。「今ある建物を壊さないと敷地が足りない」というずさんな計画でした。選手村は、埋め立て地の上に高層マンションを建てるそう。大きな地震が起きれば危険です。
 また、築地市場を移転し、その跡地を報道センターにしようという計画が。移転先は元ガス工場で、土地からは基準値の一〇~一五〇〇倍以上の水銀やヒ素、シアン、ベンゼンなどの有害物質が検知されています。
 こうしてオリンピックにかけようとしている費用は八兆五〇〇〇億円! アクセスが悪い、という理由で、わざわざ電車の路線を延伸する計画案もあるそう。
 臨海副都心は、開発したものの企業が入らず、借金だけが膨れ上がっている状態です。「オリンピック誘致」が巨大公共事業の口実になっていました。

一m一億円の地下高速…全 長約一一kmの地下高速道路・中央環状新宿線が建設中でした。周辺の住民は、交通量の増加で排ガスによる健康被害や事故の増加を心配しています。建設費用 の総額は一兆円超。一m一億円の道路です。同じく「中央環状品川線」が建設予定。全長九km・四〇〇〇億円の予算が付いています。

住宅街に高速道路の巨大ジャンクション…写真は、建設中の巨大JCT。住宅街での建設は世界にも例がありません。同時に二棟の高層ビルも建設中。工事費用は八三〇億円。

東京ワンダーサイト(TWS)…〇一年、若手芸術家育成を目的に石原都知事が決めた事業・TWS。文化施設予算は下げたのに、この事業の予算だけ四億七一五二億円、四年で八倍以上と大幅にアップ。
  設立から知事の四男が深く関わり、その親友夫妻が責任者です。本郷のTWSには、四男制作のステンドグラスがありました。都の補助金三〇〇万円で買い上げたものです。

***

  東京民医連は、医療と福祉の改善を都に要請してきました。そんな中、歯科医師で県連副会長の吉田万三さんが、都知事選へ立候補を決意。東京民医連は「都政を変える絶好のチャンス」としています。

住民の安全抜きですすむ核燃料サイクル事業 青森

 日本には50数基の原発が稼動しています。そこから出る使用済み燃料が満杯になりつつあります。行き場を失った放射性廃棄物をどうするか? 処理は後回しで稼動している現状は「トイレ無きマンション」のようなもの。
 青森県六ヶ所村で、県民の反対を押し切って、核燃サイクル事業が始まったのは1985年です。「むつ・小川原開発」の失敗でできた巨額の借金を補うため でした。20数年が経ち、施設の主要部「再処理工場」試験が中盤です。
 この試験では事故が相次ぎ、特に作業員が放射性物質を吸い込むという重大事故が起きました。
 このとき、核燃協会理事長が「お百姓さんに泥がつくのと同じで、大きな問題ではない」と発言し、県民は反発しました。再処理工場は問題を放置したまま、次の段階に入ろうとしています。
 青森県議会はこの問題で全員協議会を開く予定でしたが、与党がこれを拒否、中止しました。議会の討論や県民の意見を反映させる機会をなくす暴挙でした。 健康被害と農水産物の風評被害は、岩手や北海道にまで及んでいます。
 青森民医連は、「再処理工場」の本格操業を中止し、核燃事業の推進者が安全性を審査するのでなく、独立した第三者の規制機関をつくることを求めていま す。全国の人びとにこうした問題を知ってもらうためにも、県議選・知事選では、この問題を大きな争点にしていきたいと思っています。(横濱正幸・あおもり 協立病院)

くらし・医療・福祉が削られた
◆16の都立病院を8に半減
◆保健所の廃止・民間への移管を推進
◆特養老人ホームの運営補助 210億円をカット
◆医療費助成 300億円余をカット
◆寝たきり高齢者の介護手当、福祉手当をカット
◆シルバーパスの全面有料化
◆盲導犬のエサ代補助 年間64万円の打ち切り
◆都営住宅を新設せず150億円の削減

際限なく税金を投入しているのは
◆海外視察19回で2億4000万円余 (他県の10倍ちかい費用)
◆総額1兆円を超える地下高速建設。 1m1億円かかっている
◆オリンピックに8兆5000億円
◆「有明コロシアム」を54億円で建設。しかし、屋根がなかったため公式戦が不可能だと判明、さらに50億円を投入して屋根をつけた

(〉_〈) 削った医療・福祉は約900億円。都民のいのち・暮らしが地下高速1kmぶんに消えるなんて、ヒドいでエ~(健)

(民医連新聞 第1399号 2007年3月5日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ