民医連新聞

2007年3月5日

9条・医療うける権利守りぬこう 次期総会までの方針を決定 ――第37期第2回評議会

 全日本民医連は二月一七~一八日、東京で三七期第二回評議員会を開きました。評議員・予備評議員八一人など一四五人が参加。三七 回総会からの情勢変化やとりくみ、次期総会までの重点課題について討議。二日間で評議員・理事四七人が発言(ほか文書発言二通)し、方針および〇六年度の 決算と〇七年度予算を承認。東北大学の日野秀逸教授が「暮らしと命を守る地域医療と社会保障」で講演しました。肥田泰会長が情勢にふれ、「国民投票法反対 署名を三月中に三〇万筆」を緊急に提起。長瀬事務局長が、方針案の要点、修正点を報告しました。「急速な貧困の広がりと地域医療崩壊の根は一つ。『憲法九 条は世界と日本の安全保障。二五条は命の安全保障』の立場で悪政を転換しよう。地方自治体を悪政の推進者ではなく、住民の防波堤にしよう」とのべました。 討論の焦点を紹介します。

いのちを守る活動

 貧困と受療権侵害に対するとりくみを強めています。
 京都の原田正司評議員は、生活保護の母子加算廃止撤回を求める裁判支援、「格差と貧困をなくそう京都実行委員会」結成などを報告し、「民医連の本道」と紹介しました。
 兵庫の丹羽謙次評議員は「くらしのアンケート一〇万枚を配布、二〇〇通が返送。無年金で困っていると書いてきた人を診療所が訪問、生保受給を支援した。 震災から一二年、復興住宅では孤独死が絶えず、家賃が払えない人が強制退去に。訪問を強めている」と様ざまな活動を報告。
 新潟の羽賀正人評議員は「震災後、まだ一〇〇〇人が生活再建できない。安否確認を兼ねた配食は月二〇〇〇食になった。住居が切実。低額の有料老人ホーム二カ所を立ち上げた」と報告しました。
 愛知の矢崎正一評議員は一職場一事例運動について。「経済的事情で入院を拒否した患者の生保受給を支援した。集会に参加した組合員は『民医連らしい活動 に感動。見えにくい地域の実態の発信を続けてほしい』と。社保協でパンフ『知って得する医療・介護・税金の負担軽減策』を発行。中日新聞に紹介され、四日 で約四〇〇〇人から問い合わせがきた」と発言しました。

事実で働きかけ

 行政やマスコミに働きかける活動が出されました。高齢者実態調査で記者会見し地元紙が社説に取りあげた(沖縄)。介護ベッドの実情をDVDで大津市長に 訴え、助成が県の事業に広がり、市職員からも「初めてまともな仕事ができた」と感謝(滋賀)。ケアマネが集団で行政に介護ベッドの困難事例を提出、議会中 の要請だったが、助成が実現(岡山)。酒田市から包括支援センターを受託する一〇法人の代表者が集団で市と交渉。低い単価を上げさせた(山形)などです。

医療崩壊でシンポジウム

 医師不足、病棟や診療科の閉鎖が各地で激化。北海道から「医師会員を訪問すると歓迎される。医療機関と住民が共同し各地でシンポジウムを開いている」と の報告。鹿児島からも「救急を受ける病院が減少、国分生協病院の救急車受け入れは三年間で一・六倍に。救急隊や開業医、行政と懇談し打開を図っている」。 「県立病院から奄美中央病院に小児科指導医の回診依頼が来るほど厳しい。三月のシンポジウムに市内の病院長や役場が参加してくる」と発言がありました。

地方政治のあり方を問う

 地方行政のゆがみを指摘する発言も多数でした。
 都立病院を統廃合し、四つの看護学校も廃校、六四万円の盲導犬のえさ代もカット(東京)、関西空港事業をすすめ、不正は野放し(大阪)、特定疾患から橋 本病を除外(愛知・名古屋市)、「国民保護計画」で戦争準備に市民を巻き込む(山口)、住民投票条例制定を否決(神奈川・横須賀市)、巨額投資をともなう 市民病院の移転(宮城・大崎市)、原発企業からの寄付金を医師確保に使う(福井・敦賀市)、米軍が住民に銃を向ける訓練が激しくなる中、防衛省が医師配置 する(沖縄)など、異常な事態が起きています。各地で住民とともに学習をすすめ、選挙で不当性を訴えるという発言でした。

医師を元気にする活動

 厳しい医師の状況と、育成の努力が報告されました。
 北海道の鈴木和仁評議員は「医師配置が困難。診療所のベテラン医師が退職。地域の人から『自分も医師問題に無知だった』と言われた」と問題共有の必要性 にふれ、共同組織の存在など「ベテランには当然なことも研修医には新鮮」と伝達の大切さ、民医連を担う医師養成の決意について発言しました。
 岐阜の加藤澄夫評議員は「ホームページを見て研修医が来る。大病院のハードな研究に疲れ、小病院を希望する研修医、他県連を辞め再出発する医師も受け入れた」と地道な働きかけを報告しました。
 山梨の飯塚譲評議員は「医学生が県内に半分しか残らない。厳しい。医ゼミを成功させ元気づけたい」と発言。福井の平野治和評議員は「県連事務所を医学部 の近くに移転。学生が毎日昼食に来る」と報告し、「育てる医学対のため毎年月間を」と提案。ほか日常的に状況を把握して対応する県連の役割を強めよう(福 岡)、地域を語り民医連の果たした役割を示す(山口)との提案がありました。
 大阪の池田信明評議員は「3・11集会の実行委員会が勤務医の労働実態を調査した。医師が自分の要求を掲げながら、地域の受療権を守る民医連の役割、自 分の役割を自覚できる内容にして成功させたい」と表明。鹿児島から「マッチング世代研修医が離島医療を決意。研修に確信を持った」。沖縄から「辺野古のた たかいに連帯して、名護に診療所をつくる」と決意がのべられました。

看護師を増やせ

 窪倉理事が看護師確保状況の緊急調査結果を報告。新卒確保が六六%と深刻な状況です。「引き抜きもあります。あきらめず、全管理者の認識にし、離職防止の手だてを尽くし、長期的には育てる看対の再構築を」と訴えました。
 退職が止まらず、確保も困難、厳しいが元気を失わずがんばろうとの発言が。
 富山の寺西高子評議員は「一病棟の閉鎖を余儀なくされた。ネガティブな雰囲気にならないよう、看護の良いところを発見し、カードに」。北海道の玉井三枝 子評議員は「欠員で四月を迎えざるを得ない。看対を専任化する。病棟閉鎖しないよう確保に駆けめぐる」と発言しました。
 東京の野崎佳代子評議員は「看護委員会に困難な患者さんを助けた、という事例が集まる。民医連の役割を再確認しながら、がんばっている。廃止予定の立川 市立看護学校が、運動によって〇八年度の入学を継続する」と報告しました。
 石川・野村鈴恵評議員は「看護をよくする会を再建。地協が初めて看護学生のつどいを開き、変化があった。新たに実行委員会に学生が入り、『やはり看護師になる』と復学した学生もいる」と報告しました。
 奈良の加賀洋子予備評議員は「平和会ではランチョンセミナーで『あきらめない看護』をテキストに、事例や職場の改善を学習。地元紙が『きらり看護』で紹 介」と発言しました。新卒看護師と共同組織が講師になり、年二回ゼミを行っている福岡など、各発言は「民医連と看護の魅力を大いに語ろう」との内容でし た。

団結と連帯で

 徳島の奈賀俊文評議員は、再建のとりくみと学習の役割について発言。「お金の心配なくかかれる自分たちの診療所を」の民診づくり、ヒ素ミルク事件、振動病などのとりくみと歴史を知り、職員と共同組織が決意を新たにしている、と報告しました。
 医学会総会での「戦争と医学展」の意義(大阪)、薬剤管理の相互点検の大切さ(神奈川)、独自に沖縄平和学校を開催(三重)などの発言がありました。
 長瀬事務局長がまとめで、「受療権侵害と医療崩壊の現場は地域。現場からたたかいを。困難なのは民医連だけでなく、患者と地域の人びと、他の医療機関も 同じ。団結と連帯、人を育て学ぶことを大事に前進を」と呼びかけました。

(民医連新聞 第1399号 2007年3月5日)

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