医療・福祉関係者のみなさま

2010年7月19日

第4回被爆者医療セミナー開く 全日本民医連

 全日本民医連は第四回被爆者医療セミナーを六月五~六日、東京で開き、一六県連から医師、SW、看護師など六四人が参加しました。本セミナーは被爆者医療の後継者育成が目的です。五つの講座から、被ばく問題や原爆症認定申請の対応について学びました。

被爆認定に関する科学的な態度とは

 「講座1」は「放射線被曝とは何か」と題する野口邦和さん(日本大学講師)の記念講演。放射線 の研究者である野口さんは、原爆の放射線被害の実相について話しました。原爆症認定に使われる「DS86」「DS02」は、その基礎になったデータが隠さ れ「結果」の表だけが使われていると指摘。「実測値と照らして検証ができないものは信頼性に欠け、科学的と言えない」と批判しました。また、「DS86」 などを根拠に、被爆者の病気を「放射線起因性ではない」と断定する認定制度は科学的でなく、「疑わしきは認定する」ことが科学的態度だと強調しました。

被爆者の「心の傷」 今も癒えず大きく

 「講座2」は「被爆者の心の傷を追って」と題する精神科医・中澤正夫さんの講演。原爆被害は身体・心・生活すべてに及び、被爆者が「心の傷が一番辛い」と言うように、いまも心の問題が重要です。
 「耐えがたい事態に遭遇した時の自己防衛・混乱」から、被爆者の話には欠落や順序が違う部分があって当然で、被爆体験を聞くときは「それを理解し配慮が必要」と話しました。
 また、被爆者の心の状態は「生き残ったこと、生きていることが負い目」「逃げるとき、自分が見捨てざるを得なかった人に罪の意識を抱いている」「今も、 ちょっとした刺激であの日のあの場面がフラッシュバックする」と語りました。
 普通のPTSDと違い、被爆者のそれは時を経ても変わらないか、大きくなる傾向があり、その内容が、最初は「消えた町とか死体の群れなど直後の悲惨なこ と」だったが、現在は「自分が見捨てた人など、見捨て体験」になり、重篤で振り払っても消えず、身体的不調とともに深まる傾向があると説明しました。 「もっとも強い刺激は、自らの体験を書いたり話すこと」であり、「証言は勇気のいる行為」とのべました。

ノーモア被爆者文化遺産プロジェクト

 中澤医師は、自らが参加する「ノーモアヒバクシャ文化遺産プロジェクト」を紹介し、協力を訴えました。被爆者の受難の歴史とたたかい、そこから生まれた哲学など、すべての記録を映像や文章などで保存しユネスコの文化遺産にするとりくみです。

 また、「緊急被曝事故(災害)への対応マニュアル」を聞間(ききま)元医師(前被ばく問題委員長)が、「被爆者外来と原爆症認定申請の実際」を山地恭子 さん(広島共立病院・SW)と藤原秀文医師(広島・福島生協内科クリニック)が、「原爆症認定訴訟の歴史的考察」を齋藤紀(おさむ)医師(福島・医療生協 わたり病院)が講演しました。

(民医連新聞 第1480号 2010年7月19日)

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