医療・福祉関係者のみなさま

2010年7月19日

介護保険10年 私の改善提案 〈その1〉 生活実態わかる認定調査を 道北勤医協 東光・千代田地域包括支援センター 木村 圭介

 一〇年目に入った介護保険。二〇一一年の法改正で、問題点をどう改善させるかが焦点になっています。現状の制度では十分な介護を受けられない困難事例をもとに、介護支援専門員(ケアマネジャー)など支援に携わる専門職から改善への提案を、シリーズで聞いていきます。

 【事例】Aさん(八〇代女性)。夫と二人暮らしで、同じ市内に 子どもがいます。本人は胃疾患による貧血、全身の筋力低下で、日中は布団に臥床することが多く、屋内は這って移動。トイレも配管につかまって用を足し、入 浴では洗身ができませんでした。夫はリウマチ性多発筋痛症で難聴です。
 掃除が不十分で、台所や浴室なども不衛生。床にまな板を置いて食材を切るような状態でした。子どもは仕事が忙しく、日常的な支援が困難で、介護保険の利 用の相談先も知りませんでした。Aさんは、デイサービスに通う友人のすすめで介護支援事業所に相談し、夫婦で介護申請しました。
 二〇〇九年一二月の認定は夫婦ともに要支援1でした。ここから当事業所がかかわり、定期的な訪問介護を入れ、直ちに住宅改修を行い、トイレに手すりをつけ安全な移動が可能になりました。
 私たちは、「要支援1」という初回の認定がAさんの身体・生活状況に見合っていないと判断。「要支援」では「訪問は三カ月に一回」ですが毎月訪問し、介護サービスの調整も行い、状況を把握し、次の調査に備えました。
 二〇一〇年四月の更新時、Aさんは張り切り、認定調査員の聞き取りに対し、できない項目をいくつも「できます」と答えてしまいます。同席した私たちが、 客観的な視点で補足し、実態を伝え、その結果は要介護2の認定でした。
 初回と更新時でAさんの状況に大きな変化がないにもかかわらず、認定結果は違いました。初回の認定では実情が正確に把握できなかったことの表れです。
 「要介護」の認定を受け、Aさんは最初に相談した居宅介護支援事業所に引き継ぐことに。次回更新時にもケアマネが同席し、夫婦の困難を的確に補足すれば、予防給付にはならないはずなので、重要事項として引き継ぎました。
 夫婦は「人様の迷惑にならないように生きてきたが、お世話にならないと暮らしていけない。助かっている」と感謝しています。

制度改善についての意見・提案

 (1)認定調査時に、本人・家族が生活の困難さや実態を正確に伝えられない場合があります。調査員が「できますね」と誘導するような聞き方をすると、正当な認定ができません。実態を知るケアマネが同席し、補足することが必要です。
 (2)主治医が生活実態を把握していないと、主治医意見書に反映されません。実態をケアマネが文書にすることが必要です。
 (3)介護保険料は自動的に徴収されているのに、介護保険の利用は認定調査や審査会を経ないとできません。必要あって申請するのだから、申請と同時に要 介護1に認定すべきです。実態を把握したうえで更新すればよいと考えます。

 (民医連新聞 第1480号 2010年7月19日)

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