民医連新聞

2007年3月19日

孤独死を出さない とりあえず行きます隊 福岡 千代診療所

 孤独死を未然にふせぐには? 評議員会方針を受け、各地の事業所が模索を始めています。福岡の千代診療所(千鳥橋病院の近接診) でも、死後四カ月たって発見された患者さんの事例が。一方、予約日に受診しない患者を訪問し、救出するという経験もしました。そこで、中断対策を重視、す ぐ出動できる「とりあえず行きます隊」を結成したほか、ハイリスクの患者さんに対する問診の強化、訪問などをすすめています。(小林裕子記者)

 心臓病で内科に通院中だった独居の男性患者(76)が自宅で死亡、家族が発見したのは四カ月後 の昨年六月でした。七月、千代診療所では全職員でケースカンファレンスを開きました。カルテには、何回も電話をかけ「応答なし」の記録が。「あのとき行け ばよかった」「息子さんに連絡すれば…」、職員はショックでした。アルコール外来の患者さんの孤独死も報告され、中断対策の重要性を痛感しました。
 そんな中、医師から「外来に予約患者さんが来ない。何か起きたのでは」との連絡が。やはり独居で心臓病の患者さんです。すぐ看護師と事務職員が出発。大 家さんに鍵を開けてもらうと、動けなくなっている患者さんを発見。救急外来に搬入し、救命することができました。

ハイリスク患者の情報を把握

 副所長の正木公子医師は言います。「予約日に来ない患者さんには、職員が電話します。出ないと きは連絡を続けることになっており、主治医と相談し、家庭訪問する場合もありました。でも、これでは不十分でした」。そこで、緊急家庭訪問マニュアルをつ くり、全職員がとりくめるようにしました。
 緊急訪問の判断には、高齢者世帯か、急変しやすいか、認知症か、安否確認をしてくれるキーパーソンが近所にいるか、など情報をカルテに明確にしておく必 要があります。内科問診票に追加し、聴き取りを強めることに。また、退院の看護サマリーや救急外来から情報収集を呼びかけました。医師別の予約未受診患者 リストも作成。カルテからハイリスクの患者さん七五人をリストアップし、優先順に訪問して聴き取りを始めました。

訪問で知った厳しい生活

 プロジェクトチームの志願者を募りました。「とりあえず行きます隊」の七人です。出動の司令は看護師長、隊長は正木医師。チームは家庭訪問の先頭に立ちました。
 付近は福岡市の中で、最も高齢化率が高く、昔から低所得の人も多い地域です。表札も電話もない家、急な階段、日当たりが悪く、家財道具がない、畳がない…、驚くような住環境もありました。
 立川ひとみ事務次長は、訪問先で雨もりを受ける鍋を目にしました。前回の訪問した時、卓上コンロでカップラーメンの湯を沸かしていた鍋です。胸が詰まり ました。一方、昼食に仲間と集まり、安否を確かめ合い、通院につき合うなど、つましくも知恵のある生活に感動も。
 正木医師は「私たちは、塩分制限とか清潔指導をいうけれど、それが通じない生活もあるんです。コンビニ弁当がご馳走だったり。訪問して異臭の元が家だっ たと気づいたことも。その人は、法人が建てたケアハウスに入って、すっかり身ぎれいになりました。なかには、構わないで、と拒否する人もいます。友の会と も協力し、希望をつないであげたい」と語りました。

(民医連新聞 第1400号 2007年3月19日)

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