医療・福祉関係者のみなさま

2010年8月16日

介護保険10年 私の改善提案 〈その3〉 特養に入れず、負担分は月13万円に 山形・酒田健康生活協同組合 にじの輪指定居宅介護支援事業所 小野寺小夜子

 一〇年目に入った介護保険。二〇一一年の法改正に向け、介護支援専門員(ケアマネジャー)など支援に携わる専門職から改善への提案を、シリーズで聞きます。

 【事例】Aさんは長年家族と別居し、内縁の妻と生活していまし た。二〇〇七年一二月、肝硬変・肝性脳症で入院した時点で、退院後の同居を内縁の妻が拒否。二人の息子の家庭にもいまさらの同居は困難なため、施設入所を 希望しました。しかし、特養ホームは待機せざるを得ない状態で、有料老人ホームに入所し、日中は併設のデイサービスを限度額ぎりぎりまで利用し、オーバー する日数分は自費にしました。毎月の負担が一二~一三万円にもなり医療費も含めると本人の年金では間に合わず、息子たちが援助しています。
 Aさんは興奮すると職員に杖を振り上げたり、ほかの入所者・利用者に暴言を浴びせることがあり、施設からは「暴力行為があった場合は即刻退所」と通告され、今後に不安を抱いています。
 長年家族を顧みなかった父でも、息子たちは分担して協力はしています。しかし、「心情として同居はできない」と言います。定期受診に付き添い、費用負担もしていますが、いつまでも経済的援助を続けられません。
 Aさんは当初、内縁の妻の元へ戻りたいようすでしたが、最近はあきらめています。息子たちは、家族の状況がどうであれ行き場のない年寄りが長く特養に入所できないことに不満を持っています。
 特養入所までの経済的な負担が大きいので、軽くする方法を検討しましたが、結局いまの施設で特養の順番を待つしかないと判断しました。暴力行為について は、施設側がAさんの精神状況を把握できるようになり、不穏状態の対応にも慣れてきて、主治医との連携もとれています。
 有料老人ホーム側からの退所通告はさほど不安がなくなりましたが、二男からは教育費などがかかるので、父への金銭支出に困っているとの訴えが出ています。

保険料によらない財源確保を

 特養入所を長く待たされる場合、在宅介護であれ、Aさんのように有料老人ホームであれ、家族に精神的・肉体的な負担と多大な費用負担を強いているのが実情です。特養入所待機者が少なくとも一年以内には入所できるように施設を整備する必要があります。
 酒田市は重複申請があるため、特養待機者は二〇〇人とも三〇〇人ともいわれています。しかし、市は施設を増やそうとはしません。背景には、施設を増やすと介護保険の自治体負担が増えたり、保険料にはね返るしくみがあるからです。
 また介護保険は、使った分の一割負担ばかりでなく限度額を超えた部分を全額自己負担しなければならず、経済的な負担が重い制度です。保険料や利用料の引き上げによらない財源を確保して、誰もが安心して暮らせる老後の保障へ、制度を見直すべきだと考えます。

(民医連新聞 第1482号 2010年8月16日)

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