医療・福祉関係者のみなさま

2010年8月16日

フォーカス 私たちの実践 夜間を含む家族の介護体験 北海道・勤医協札幌西区病院 退院前に体験して在宅介護をスムーズに

 退院後の在宅療養では家族が介護するケースが多いのですが、初めての場合、家族にはどんな介護が必要なのかやその大変さは、なか なかイメージできません。北海道の勤医協札幌西区病院では、患者の退院前に家族が病棟で夜間を含む介護を体験することで、理解を促しています。第九回学 術・運動交流集会で、遠藤由衣さん(看護師)が発表しました。

 当病棟は障害者施設等入院基本料を算定する一般病棟で、二四時間介護が必要な患者がたくさんいます。そのため在宅療養を希望する家族には、夜間を含む介護の状況を理解してもらうことを目的に、退院指導の一環として介護体験を取り入れています。
 介護体験は個室を準備し、退院後に必要となる介護を、家族に夜間も含めて体験してもらいます。職員もいっしょに介護に当たり、適切な方法を考えます。時間は一八時から翌日の一五時です。

家族も病気を抱え

 Aさんは八〇代女性。病名は右大腿骨頚部骨折手術後、認知症、ラクナ梗塞後です。六〇代の息子と二 人暮らしですが、その息子も脳梗塞後構音障害、ペースメーカー挿入中で、介護による負荷で心不全を起こす可能性がありました。そのため二四時間の在宅介護 は困難と評価していました。しかし息子さんは、「母が家に帰りたいと泣いている。どこまでできるかわからないが、希望をかなえたい」と在宅を希望。そこで 退院に向けて指導を始めました。
 Aさんは頻尿で夜間は三〇分~一時間の間隔です。転倒の危険性もあります。何度も夜間の状況を息子さんに説明しましたが、「できるよ。夜はオムツを使う。そんなに大変じゃない」という認識でした。
 そのため、まず夜間も含む必要な介護を理解してもらい、実際にできるかどうかの判断も必要だと考え、介護体験をすすめました。当日は、息子さんが寝てし まいAさんが起き上がったのに気づかないこともありましたが、ポータブルトイレでの排泄介助はほぼできていました。
 体験後、「昼間と違って夜はフラフラしている。思ったよりオシッコの回数が多かったよ。やってみなければわからないが、何とかできそうだ」と息子さん。 想像以上に起きる回数が多いことなどを理解しました。私たちも可能と判断し、この後サービス担当者会議を開き、訪問介護やデイサービスを利用して介護負担 を減らす方針を決めました。

「役に立ってるよ」

 退院後しばらくして訪問し、ようすをうかがいました。Aさんは、「ケンカはときどきするが、病院で はガマンしていたからね。やっぱり家がいいよ」と、入院中よりも表情が良く、口数も増えていました。また息子さんは、「家に帰ってきて、介護体験や指導が 役立っている。夜にあんなに起きる必要があるとは知らなかった。今は酒もやめてるんだよ」と話していました。サービスを利用することで、Aさんも息子さん も、健康を保ちながら在宅生活を続けていました。
 夜間を含む介護体験によって、(1)二四時間の介護を見据え、介護者が退院後の生活をイメージできる、(2)夜間の介護力を見極めることができる、 (3)退院後に必要なサービスを決める判断材料となる、の三点が得られます。
 介護体験を行ったのはまだ数例ですが、今後も事例を重ね評価していきたいと考えています。

(民医連新聞 第1482号 2010年8月16日)

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