医療・福祉関係者のみなさま

2010年8月16日

尿・血液検査 異常が多い ホームレス健診まとめ、市と懇談 宮城民医連

 宮城民医連が六月四日に実施した「路上生活者等の健康を守る大健診」(民医連新聞七月五日号で既報)の結果がまとまりました。 ホームレスが不健康な状態で放置されている実態がわかり、県連では七月二三日、その結果を示し仙台市と懇談を行い、対応を求めました。(神馬(じんば) 悟、宮城民医連事務局)

 当県連がホームレスの健診を実施したのは二回目です。一回目は医師の診察と血圧測定でしたが、今回 は初めて尿検査と血液検査、歯科の診察も加えました。ボランティアは医師五人、歯科医師四人をはじめ保健師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、歯科衛生士、 リハビリ技師、ソーシャルワーカー、医学生など六二人でした。
 その結果、尿タンパク(+)、潜血(+)で腎臓や尿路系の疾患が疑われる人、尿糖(+)、血糖値が高く糖尿病が疑われる人、肝機能検査と既往歴から肝臓 病の進行が疑われる人などを発見。一人は血色素量や赤血球数が異常に低く、放置すれば命にかかわる病気でした。尿・血液検査は健診には必須項目といえます (下図表)。
 また歯科健診を受けた一六人中、一二人が要治療で、歯根しか残っていない状態の人が九人という深刻さでした。

受診につながった人たち

 健診で血圧が二一〇と高かったAさんは、その後、医療券をもらい市立病院の内科を受診。心電図などの諸検査は問題なく、降圧剤を三〇日分処方され、後日、結果返しの時、血圧は一五〇に改善していました。
 歯痛をずっとガマンしていたBさん。リストラされ一年ほど路上で生活し、健診時の所持金は二〇〇円でしたが、歯科医師の紹介で医療券が発行され、市立病院の歯科を受診しました。
 健診で血色素三・五g/dl、腹部腫瘤を指摘されたCさん。市役所で待ち合わせましたが現れず、一二日後、本人から「仙台駅にいて歩けない」との連絡が 入りました。救急車で坂総合病院へ。入院し、サッカーボール大の腹部腫瘤の摘出手術を受けました。救急医は「このまま放置していたら、死ぬところだった」 と話していました。
 同院は無料低額診療を実施していますが、Cさんの入院費は市から出ました。

自立と生活再建にむけて

 実は、六月四日の健診受診者は三三人でしたが、同時に実施した「仙台夜まわりグループ」の食事会への参加者は五〇人でした。
 参加した医学生の一人は「病気とわかるのが怖い、発見されてもどうにもならないと諦め、診察を拒否して帰ってしまった人もいた。保険証がない、治療費も ない、生活保護も受けられないという、持って行き場のない怒りも感じた」とのべています。
 受診の機会を提供しながら、生活の再建にむけて支援していくことが課題と実感しています。ボランティア団体と情報交換しながら、自立に向けた継続的なとりくみを行うことを確認しました。

市の健診内容の充実求める

 仙台市は、ホームレス向けに「胸部レントゲン」「血圧測定」を実施していますが、これだけでは健康状態の全体が把握できません。
 当県連は市と懇談し、健診結果を知らせ、「市が実施している健診の内容を充実すること」を要請しました。民医連から六人と市の福祉局から四人が出席しました。
 尿、採血検査の重要性を双方で確認し、市側は「検査を実施し、問題提起していただいたことに感謝する」と表明しましたが、「ホームレス支援団体が動いて いるから行政が動くことができる一面がある」などとのべ、健診項目の追加については即答を避けました。
 また、必要な人に医療券の発行などを確認したほか、健診の意義や雇用、自殺問題など社会問題についても意見交換しました。
 ホームレスの人たちが自立するには、まず健康であることが前提です。また、健診をきっかけに路上生活から脱却する決意をする人もおり、支援につなげる大切な機会であり、今回の健診はそのための一歩になったと思います。

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(民医連新聞 第1482号 2010年8月16日)

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