医療・福祉関係者のみなさま

2010年9月6日

奨学生になってね 医療職体験で高校生と結びつき深める 長野健和会

 長野県飯田市にある健和会病院で、いま医学生をはじめ看護学生などの奨学生が確実に増え続けています。「高校生医療職体験」や 「医学部をめざす高校生のための受験勉強ノウハウ講座」などで高校生と結びつき、地域医療の大切さと民医連を知らせていることが特徴的です。夏のとりくみ を八月四日に取材しました。(村田洋一記者)

全職場をあげて!

 「高校生医療職体験」は毎年二回、春と夏に行っています。今夏は八月四~五日の二日間で、のべ九一人の高校生が参加しました。
 毎回、市内や近隣の九校全部に呼びかけ、一~三年生の高校生一〇〇人近くが体験に来ます。
 はじめて体験する医療職の現場。患者さんと接することもはじめてです。技術だけでなく患者さんやスタッフとのコミュニケーションが必要と知り、自分に向いているか、考えたり、進路を決めるきっかけにもなります。
 体験は生徒の希望する職種に合わせて職場ごとに受け入れます。今回は医師志望が一人、看護師三〇人、リハビリ一四人、薬剤師、介護職、放射線技師、検査 技師が各二~三人の志望者たちです。この日、会場では看護師一〇人ほどと薬剤師やリハビリ技師が午後から高校生の相手をしていました。職場では迎える準備 中です。
 体験の前に平澤多津子事務長が生徒たちに説明しました。「民医連は地域のみなさん一人ひとりが出資金を出してつくった病院です。理事長とか誰かの持ち物ではなく、みんなの病院です」。
 続いて、医学部志望の生徒は牧内智則副事務長(医学対担当兼任)から「医師の役割」「民医連医療のすばらしさ」などの話を聞き、若手の赤澤智之医師からマンツーマンで説明をうけ、見学しました。
 看護職の志望者は、まず六グループに分かれて手浴とハンドマッサージ、血圧測定の実技指導を受けました。「指間も、しわの間もやさしくしっかり洗って ね」と先輩看護師が指導します。指導にあたる看護師の中には何年か前に体験に参加した人もいます。
 さっそく病棟に行って入院患者の手浴とハンドマッサージを行いました。自分の孫のような高校生にマッサージしてもらい、中には感激して泣き出す人もいました。高校生もうれしそうでした。

奨学生が先生に!

「医学部めざす高校生のための受験勉強ノウハウ講座」

 この夜、今年で三回目の「医学部をめざす高校生のための受験勉強ノウハウ講座」が開かれ、高校三年生五人が集まりました。医療職体験などに参加し、医学部をめざす子たちです。毎年医学部合格者を出す地元の高校にポスターを貼ってもらい知らせています。
 講師は今春、医学部に入学した戸崎達さん(山口大一年)と代田香織さん(山梨大一年)。ともに奨学生です。事務局では事前に高校生から聞きたい項目を集 めて講師の二人に連絡します。各科別の攻略や苦手克服方法、夏休み対策、モチベーション、浪人時代の予備校生活など話はつきません。高校生の質問に一つひ とつ、ていねいにやさしく答えていました。
 講師の二人も一回目の講座の参加者です。「ためになったので今度は自分たちが後輩にアドバイスしたい」と喜んで引き受けました。
 戸崎さんは高校時代に民医連の話を聞き、「合格したら奨学生になろうと決めていた」と言います。同院について「病院という感じがしない。地域に開けてい て、気さくな先生がたくさんいて、大好きです。私も尊敬する和田浩先生のような優しい医師になりたい。もちろん卒業したら、帰ってきてこの病院で働きた い」と語ってくれました。
 代田さんもやはり高校時代の医療職体験がきっかけで医学部へ。「あったかい雰囲気が好きです。浪人時代は松本で過ごしたので長野県民医連の事務所にも 通って、先輩とも話をしました。将来は長野県で医師研修を受けます」と。

医学生の相談に親身になって

 いま長野県民医連の奨学生は二三人いますが、その中で飯田出身者は一年から六年生まで一二人います。医師やスタッフの熱意と率直さが決め手のようです。
 医学対担当は牧内さんと伊壷一輝さんの二人体制です。イベントの連絡や情報の発信を怠(おこた)りません。高校生には一二月に模擬面接、センター試験の あとにも志望校にあわせた模擬面接を実施。そのために全国の大学の傾向をつかみます。「オール民医連」の強みをいかして、各地の県連から情報を得て、後期 試験まで親身に相談にのります。合格後は入学前実習を行い、奨学生になってもらいます。不合格でも来年に向けてアドバイスします。
 遠い他県へ行った奨学生とも連絡を絶やさず、年に二回は必ず会いに行きます。メール配信も充実しています。年に一回、飯田に帰省する正月には「奨学生交流会」を行い、親睦を深めています。
 担当になって五年になる牧内さんは、「何でも相談に乗ってくれる兄貴のような存在」とみんなの厚い信頼を得ています。
 高校生対策が成功している背景には「病院への住民の信頼」も。牧内さんは「三〇数年の医療活動の歴史が基盤となり、友の会活動で地域での存在感も大き く、高校との関係も良好です。医師になって戻ってきてほしいと地域のみんなが願っています」と話しました。

(民医連新聞 第1483号 2010年9月6日)

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