民医連新聞

2007年5月7日

“サプリメント” 危険性を忘れず情報の収集を 藤竿伊知郎(薬剤師)

 大流行のサプリメントですが、危険性や不明な点も多い。医療従事者は、どう向き合ったらいいのでしょうか? 『サプリメントとの賢いつきあい方』あけび書房(二〇〇六年)の著者の藤竿伊知郎さん(東京・協同組合 医療と福祉)の寄稿です。

広がる誤った健康知識

 サプリメントを利用する消費者は増え続け、市場調査によると三人に二人が何らかを使用しています。医療現場では以前、慢性疾患や難病の患者が利用する健康食品が問題になっていました。サプリメントは若者や働き盛りへも利用が広がっています。
 一九九五年から始まった規制緩和で、医薬品と区別がしづらいサプリメントが販売され、消費者の誤解を生んでいます。テレビやインターネットなどで情報が 洪水のように提供され、医療従事者さえサプリメントの「有用性」情報に振り回されています。
 健康不安をあおるマスコミのコマーシャルが繰り返し流され、医薬品で問題になっている「薬が病気をつくる」状態が、サプリメント分野でもおきています。
 サプリメントがもつ最大の問題点は、誤った健康知識をもとにムダな商品を買わせることです。サプリメントを飲んでいれば病気を予防できると思い込むことで、適切な受診の機会を奪うおそれがあります。
 一方で、安全性が保障されず、服用すること自体で健康障害を起こす例もたくさんあります。食欲抑制剤や甲状腺ホルモンといった危険な薬剤が混入したダイ エット食品なども輸入されています。その他にも、肝障害を引き起こしたサプリメントは後を絶ちません。アガリクス製品の安全性を検証するために国立医薬品 食品衛生研究所がおこなった試験では、発がん性が指摘される商品も見つかっています。

他人にすすめないこと

 消費者は、「あやしい」と思いながらも、テレビや雑誌の健康記事を信じて、購入しています。テレビ局のバラエティー番組の制作実態が暴露されましたが、それは氷山の一角です。
 これに対し、エビデンスのない情報が多いため、健康指導をする立場の医療従事者は、患者へのアドバイスに困っています。
 限られた情報の中でも指導できることは以下のような原則です。
 (1) 消費者ができる自衛策は、(1)効果の評価を医療関係者といっしょに行う、(2)副作用が出たら薬剤師や消費生活センターに伝える、(3)他人には簡単にすすめない。
 (2) サプリメントは生活を豊かにすることができる道具です。ただし、作用には限界があり、安全性は自分で管理する必要があり、購入費用も安くありま せん。利用にあたっては、食事の補助と考え、家計に影響がでない範囲で利用するのがよいでしょう。

被害情報を蓄積しよう

 現時点で充実すべきことは、患者から有効性・安全性の情報を収集し蓄積することです。日本医師会は、会員向けに健康食品の健康被害をデータベース化し始めています。民医連の副作用モニターにも健康食品による被害が報告されています。
 痩身目的で「雪茶」を飲用。重篤な肝機能障害を起こした症例です。五〇代の女性で、一カ月半後に下痢症状が出現。その後、全身倦怠感、腹部膨満感や肝機 能検査値の異常が出て入院しました。しかし、主治医が原因を精査しても不明、患者の家族がインターネットで情報を見つけ、やっと原因が特定できました (「民医連新聞」二〇〇五年一二月一九日号に詳細)。
 現場でつかんだ健康被害情報は事業所の薬剤師を通じて、副作用モニターへお寄せください。また、サプリメントについて評価した情報は積極的に公開してください。

(民医連新聞 第1403号 2007年5月7日)

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