医療・福祉関係者のみなさま

2010年11月1日

第1回 高齢者医療実践ハンドブックセミナー 終末期ケアの展望と課題 家族(介護者)支援と医療職教育が 老年期のQOL(生活の質)を左右する

 全 日本民医連高齢者医療委員会は、一〇月一六日、第一回高齢者医療実践ハンドブックセミナーを東京で開き、医師・看護師ら約二〇〇人が参加しました。これ は、今年二月に刊行した「高齢者医療実践ハンドブック」の活用をすすめ、今後も最新の知見に学び、日々の実践を加えながら充実させていくための企画です。 第一回は「終末期ケアの展望と課題~高齢者のターミナルケア」をテーマに講演と実践報告二つが行われました。(村田洋一記者)

 講演は、名古屋大学病院の卒後臨床研修・キャリア形成支援センターの平川仁尚さん。専門は 高齢者ケア。老年内科外来や認知症外来、介護者外来も担当しています。「老年科は高齢者のクオリティー・オブ・ライフ(QOL=生活の質)を診る。生きが い、家族などを含め、その人を全人的に診るところ」と説明しました。
 「高齢者の終末期」とはいつか、食事がとれない、寝たきり、意識がなくなった時か、日本老年学会の定義もまだあいまいです。
 「要介護状態の高齢者には早い段階から、治療と平行して、終末期ケアを提供していくのが望ましい」というのが平川医師の考えです。その内容は「マッサー ジする、そばにいる、寄り添う。体位の工夫、環境の調整、整容・美容、会いたい人との面会、レクリエーション、スピリチュアルケア(人間の尊厳、その人ら しさを大切にするケア)」など。

家族のケアとリビングウイル

 家族に対するケアも重要です。家族は介護ストレスで生活習慣病、うつ・不安などになりがちで、「患者の家族は第二の患者」と考えるべきと平川医師。スト レスを抱えた人やQOLの低い人に介護されることがQOLを低くします。「介護する側が幸せなことが重要」と強調しました。
 介護者の身体的・精神的・社会的な負担を早期に察知し、レスパイトケアや息抜きを取り入れたり、施設と在宅の看取りの違いや利点を伝えておくことが必要 です。入院・入所中の介護に家族参加を促すことも家族ケアの一つです。
 リビングウイル(living will)は、元気なうちに治療や介護に関する患者の選択を書面や口頭で表明するもの。平川医師はそのメリットを「家族 や医師の苦悩を減らすことができる」、デメリットは「法的根拠がないこと」とのべ、日本でも「死に対する話し合い」が自然にできることが望ましいと話しま した。
 終末期ケアに携わる職員のメンタルヘルスもQOLを左右します。セルフケア、ピアサポート(聞いてもらうことで楽になる=共感)、組織的な事例検討会 (倫理検討会)を行うと問題が整理でき、メンタル不全を予防でき、職員教育はQOL向上に役立つ、とのべました。

職員学習などの実践報告

 山口・宇部協立病院副院長の立石彰男さんが「地域緩和ケア研究会のとりくみから見えてきた終末期ケアの課題」を報告。地域の病院といっしょに医師が中心に勉強会を開き、基幹病院連携室や緩和ケア病棟スタッフなども加わり「宇部市地域緩和ケア研究会」へ発展しています。
 愛知・生協わかばの里介護老人保健施設の介護看護師長吉田美加さんは「老健施設の終末期ガイドラインの作成と実践」を報告しました。
 開設当初から施設での「看取り」を行い、職員の「怖い」という声に対処するためアンケートを実施し、月一回の学習会を行い、施設の方針やガイドラインを策定しています。

(民医連新聞 第1487号 2010年11月1日)

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