民医連新聞

2007年5月7日

相談室日誌 連載238 利用料が払えない背景には 佐藤 夕美子

 昨年一○月から入所しているAさん(六○代・女性)は、五○代で脳出血を発症し、一○年近く病院や施設を転てんとしていました。左片麻痺があり、車椅子 を利用しています。移乗の一部で介助が必要です。コミュニケーションは取れますが、うつぎみで訴えは少なく、本人のペースでゆっくり生活しています。離婚 暦があり、家族は娘さんが一人います。トラック運転手の娘さんは、Aさんが当苑入所前に離婚。友人宅やトラックの中で寝泊りしていました。
 Aさんが入所して三カ月目、娘さんと連絡が取れなくなりました。そのころ、前施設でも利用料未払いがあることが分かりました。行政の高齢者総合相談係な どが介入し、カンファレンスが行われて、その時は遅れながらも、利用料の支払いは続いていたようです。
 しかし、当苑には入所時からまったく支払われていませんでした。Aさんは、施設で衣食住の環境は守られていますが、Aさんの年金を娘さんが使ってしまう ことは、経済的虐待・ネグレクトにあたる問題です。Aさんや行政との相談を重ね、四月からの年金受け取りを変更、前口座を解約し、残金を支払いにあてまし た。Aさん自身で年金を管理し、利用料の支払いなども行うことにしました。その後、一カ月近く経過した現在も、娘さんとの連絡は取れません。
 行政担当者は「初めに入院した病院の治療費が高く、そこからやりくりが難しくなった」「娘さんも病気があり、体調は思わしくないのかもしれない」と、以 前のカンファレンスの様子を話しました。国民健康保険料やその前にいた施設などの支払いも滞りがちだったそうです。経済的問題が出始めたのは何年も前から だと思いますが、問題が解決されずにきました。
 Aさんは「娘はだらしなく、一般常識がなくてどうしようもないが、私の年金がないと困るだろうし、これで縁が切れてしまうのではないか」と心配していま す。Aさんの精神面の安定をはかりつつ、娘さんと連絡が取れた場合は、娘さん自身の問題を整理し、親の年金を当てにせず、どうしたら安定した生活が送れる かをいっしょに考えていきたいと思っています。

(民医連新聞 第1403号 2007年5月7日)

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