医療・福祉関係者のみなさま

2010年12月6日

県内で初めて無料低額診療 ―沖縄医療生協―

 沖縄県は失業率、平均所得、生活保護率などがの「全国ワースト1」。「基地に頼らない経済の立て直し」が課題の県内で初めて沖縄 医療生協の二病院と四診療所が無料低額診療事業(無低診)を開始しました(一〇月一五日)。約一カ月半に五〇件もの相談が寄せられ、対応にあたる職員は 「やって良かった」と実感を語っています。(小林裕子記者)

「やって良かった」

 所得が生活保護基準の一〇〇%未満の場合は窓口負担が免除(無料)、一〇〇~一三〇%の場合は半分に減額。医療生協基準では、医療・介護の費用やサラ金返済なども考慮して判定します。
 沖縄協同病院(那覇市)には約三〇件の相談が。嶺井律子さん(PSW)は「連日のように相談があります。『今日すぐ診てほしい』といったせっぱ詰まった 人も」と話します。まだ「相談中」の人が多く、適用者は一〇人ですが、うち九人が「免除」の判定です。相談者の特徴は「高齢者、短期証、中断」と嶺井さ ん。相談中の人には無低診よりも生活保護の検討を要する人も多くいます。
 職がなく中学生を頭に子どもが三人いる六〇代の年金生活者、懸命に仕事しても短期保険証の更新ができない収入の人、身体は二の次の実態です。「当事者の 力を引き出す支援をしていきたい。事業の意味はある」と断言しました。
 中部協同病院(沖縄市)には約二〇件の相談が。三人が無低診を利用しています。新垣哲治さん(SW)は「相談から生活保護につながった人が五人を超えま す。制度を知らず苦しい生活から抜け出せないケースが多い」と。
 ある父子家庭。三人の子をかかえ父親はアルバイト職で無保険。中学二年の子が修学旅行前の健診で異常が出て、教師の紹介で来院しました。子どもに保険証 が発行されること、父子家庭の給付金を知らせると安心しました。

教師からの反響が大

 新垣さんは、学校からの反応に驚いています。「教師が無低診の報道をしっかり覚えていたの は、子どもの貧困の深刻さを前から認識していたからでは」と見ます。他院のSWから「すごいね。生協の組合員になるよ」と言われたり、行政の保健師から相 談があったり、「福祉の最前線で働く人の共感」です。「相談者の深刻さは複雑で困難の根が深い。頼れる人がなく、がまんを重ねていた人たち。行政機関の人 とともにかかわり、お互いに相談できる関係をつくっていきたい」と新垣さん。
 那覇民主診療所では五人の相談を受けました。嘉陽信子所長は「たいへんな反響がありますね。使える制度だと思います。これをきっかけに支援制度を紹介し て、生活全般の問題解決の窓口になれる。駆け込み寺みたいね」と話しました。

もっと知らせたい

 同医療生協では「無料低額診療事業」を、医療生協の「命を守る大運動」と民医連の「無差別平等の医療」の実践として今春の総代会で決定しました。
 総務部長の仲西常幸さんは言います「第一は医師である理事長の熱意です。実現を現場の職員や組合員が期待しました。医師が患者に必要な検査を説明する と、経済的理由で断るケースが起きていました。この事業をはじめる前、医師は『無料でいいから受けてくれ』という言葉が喉まで出かかったんじゃないか。患 者の実情を肌で感じとっていた現場の職員が無低診の実現を喜んでいると思う」。
 ところが県は消極的な態度。数カ月も待たされ、OKが出たのは九月三〇日。マスコミの反応も鈍く、在沖一五社中で報道したのは地元紙二社だけ。しかし、 記者会見の翌日から医療生協には相談の電話がどんどん入ってきました。
 課題はもっと知らせること。各市の国保課・保護課、学校などに宣伝物を配布するなど準備中です。

(民医連新聞 第1489号 2010年12月6日)

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