民医連新聞

2007年5月21日

相談室日誌 連載239 高齢者虐待に対する位置づけ 赤山 泰子

当在宅介護支援センターは、昨年四月に同一法人内に地域包括支援センターが発足してから、市の委託業務が外れ、居宅介護支援事業所として活動しています。しかし、ケアプランセンターになってからも、業務は介護保険のケアプランの相談だけにとどまっていません。
 昨年四月、高齢者虐待防止法が施行されました。この間、虐待ケースとして二例に関わる機会がありました。
 夫から抑圧されていた九〇代女性と、孫の暴力を受けていた八〇代夫婦です。このケースを発見後、市に相談すると「生活保護のケースワーカーだ」「いや高 齢者担当だ」とたらい回しにされたり、また、「ビジネスホテルに行けばいい」とか「介護保険でショートステイを利用すればどう?」などとも言われたりしま した。しかし、そんな中でも、役所内で部署間の連携の必要性を発言した職員や、自宅への立ち入り時にケガをしながら、ひるまず保護を実行した保健師のよう に気骨のある職員もいました。様ざまな人たちの関わりを得て、虐待の事実発見後一週間で措置入所することができました。
 措置入所は、生活・人生の大きな分岐点となります。高齢でもあり、また、ダメージを受けた直後なので、私は三人のその後に不安を抱いていました。しか し、九〇代の女性は夫と別れ、施設を出て、強い意思で一人暮らしを始めました。八〇代の夫婦も、本当は心配でたまらない可愛いはずの孫と自らの意思で離れ ました。三人は措置入所を経て、それぞれ転居し、新生活をスタートしました。こちらが心配するほどには、弱々しさも見せず、自分らしく落ち着いて過ごされ ているように見えます。長い人生を生きてきた三人のしなやかさやしたたかさ、そして生きる力のたくましさに、すごいなあと感心するばかりです。
 高齢者虐待防止法が施行されて一年。制度を運用する行政の姿勢が問われます。この法律にもとづいて三人は保護されました。医療や介護などの制度は、高齢 者に厳しい内容になってきています。制度や法律は、内容はもちろんですが、運用についても、人情のある温かい、高齢者を守るものであってほしいと願ってい ます。

(民医連新聞 第1404号 2007年5月21日)

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