いのちと人権を守る

2007年5月21日

生活保護受給者の食事は貧しい SW(ソーシャルワーカー)と栄養士が実態調査 香川 高松平和病院

「お葬式にも行けない」なんて…

 非正規雇用の拡大、低すぎる最低賃金や国 民年金。生活保護以下のワーキングプアや年金生活者が広がる中、政府は「低所得世帯との均衡」を名目に、生活保護基準を切り下げようとしています。香川・ 高松平和病院では医療ソーシャルワーカー(MSW)と栄養士が、「香川県生活と健康を守る会連合会」(生健会)と協力し、生活保護世帯の食事内容などを調 査。人間らしい生活を保障するには、「現状の保護費が高すぎることはない」と実証しました。(川村淳二記者)

戦後最悪の生保引き下げ

 「二一〇円の惣菜を二回に分けて食べている」、「スーパーで五〇〇円の寿司が買えない」、「お葬式にも行けんし、孫にお年玉もやれん」 。四月一二日、生健会の事務所に生活保護受給者が集まりました。戦後最悪の生活保護の基準引き下げを学習し、反対運動をすすめるためです。
 政府は昨年、月一万七九三〇円の老齢加算を全廃。母子加算も段階的に廃止します。
 これを不当とし第二の「生存権裁判」が各地で始まり、全日本民医連も支援を決めました(注)。

調査で判明、 カロリー不足

 SWの安田準一さんは「生活保護受給者の食生活に着目し、貧困の実態を実証的に示したい」と、 ずっと考えていました。そこで三月の県連の学術運動交流集会に向けて、生保受給者の保護費の使い方と一週間の食事内容を調査しました。管理栄養士の佐藤和 香子さんに相談して調査票も作成。生健会に協力を申し入れました。
 生健会の会員さんで、三〇~八〇代の生保受給者七人から協力が得られました。佐藤さんは、ほか三人の食養科職員と手分けし、業務の合間をぬって、摂取カロリーを算出しました。
 結果は、一人暮らし六人の食費は一日五四四~一〇〇五円。六人が必要カロリーを摂取できていないと推定されました(表)。

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食べる楽しみもない

 「調査票で感じたのは、食事がワンパターン化していること。近くで安く買えるものが決まってい たり、同じものを何回かに分けて食べているからだと思います」と、佐藤さん。カロリーやバランスの不足だけでなく、人間の基本的欲求の一つ、食べる楽しみ を得られているかも疑問です。
 Aさんの保護費は、月六万八〇〇〇円。そのうち通院で九六〇〇円、二日に一度の銭湯代が五二八〇円。食費を節約するために自炊しながら、栄養バランスに 気をつけているようでした。しかし食事はワンパターンになりがちです。病気で自炊が難しくなると、この保護額では、やりくりできなくなるでしょう。

誰もが人間らしく

 「生活保護の給付は決して十分ではない。受給者の生活実態からそれが実証的に示せれば、裁判で勝つ力にもなる。国民にも事実が分かる」と、安田さんはいいます。
 貧しい人どうしの対立ではなく連帯へ。だれにも人間らしい生活を保障するには、生活保護基準の引き下げではなく、基準を下回らないよう最低賃金や公的年 金を引き上げることが必要です。安田さんたちの調査に共感を広げる力を感じました。
 今回の調査は、一週間の食事調査票からの分析だけになりました。佐藤さんは「できれば一人ひとり面談し、生活状態や疾患なども聞きとりたい。運動量や疾患との関係からも、より詳細に分析してみたい」と、話しました。

 ()生存権裁判は青森、秋田、新潟、東京、京都、兵庫、広島、福岡で提訴されています。全日本民医連SW委員会では、生活保護申請での権利侵害事例を集約中。六~七月には「生活保護受給者老齢加算減額廃止後の生活実態調査」を実施する予定です。

(民医連新聞 第1404号 2007年5月21日)

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