民医連新聞

2007年6月4日

相談室日誌 連載240 いまの医療・介護制度の矛盾に憤り 松田 光代

当院は療養病床をもたない一般病院です。リハビリや在宅調整を目的とし、紹介入院される患者さんもいます。
 先日、このような転院相談がありました。ある公立病院のソーシャルワーカー(SW)からです。「七〇代女性で、病名は肺癌。脳や腰椎にも転移し、ターミ ナル状態です。寝たきりで傾眠傾向があり、緩和治療中心。予後は一カ月ぐらい。以前、そちらに通院していた患者さんです。四カ月前に呼吸困難で自宅近くの 当院に救急で受診後、入退院を繰り返しています。在宅療養は無理で、病院で最期をむかえることを希望しています」とのことでした。「転院について家族の意 向は?」とたずねると、「転院を希望しているわけではない」と言います。入院を受け入れましたが、数日で亡くなりました。「転院を希望していないターミナ ル状態の患者さんを動かして良かったのか?」と、疑問が残りました。
 また七〇代男性の患者さんについて、親族から次のような相談が。「昨年から食事がとれなくなったため、一カ月半前に胃ろうをつくったが、寝たきりになっ てしまいました。患者は妻と子の三人暮らしで、家族は病弱で十分な介護はできない。SWから老健を探すように言われ、あちこち探したが、胃ろうを理由に断 られたり、数カ月待たなければ無理と言われました。結局、明日自宅へ退院しなくてはならないが心配。入院させてもらえるか?」とのことでした。長期療養を 希望されたので、当院では難しいことを話し、ほかの療養型病院に申し込むようすすめました。受け入れできないときは、やり場のない気持ちになります。
 政府は医療費削減目的で、平均在院日数の基準を短縮させています。これによって、一般病院には急性期治療が終わった患者さんを、早期に退院させることが 求められています。一方で、退院後の受け皿となる介護施設はどこもいっぱい。追い討ちをかけるように療養病床は削減・廃止の方向です。在宅に戻れる条件の ない人は、まさに八方ふさがり。
 ときには、持ち込まれた相談に「ひどい」と思うこともありますが、「ひどい」のはいまの制度。医療・介護制度の矛盾に憤りを感じます。

(民医連新聞 第1405号 2007年6月4日)

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