医療・福祉関係者のみなさま

2011年1月3日

きらり看護・ほっと介護 心の落ちつき取り戻し心因性頻尿が治った 岡山ひだまりの里病院/田中泰子(看護師)

正子さん(仮名)は九〇代の女性。夫と死別し、認知症になり施設に入所しましたが適応できず、当院に入院しました。ところが転倒して左大腿骨頚部を骨 折。手術ができず排泄は全面介助になりました。そのころから正子さんは、頻回の尿意を訴えるようになりました。心因性頻尿との判断で、膀胱訓練を始めまし たが、訴えはますます激しくなりました。そこで正子さんのケアを見直すことにしました。
 正子さんの性格や生活歴、思いを知らずに、ケアをしていなかっただろうか? 寄り添うことを重視し、思い出話や世間話をする中で、情報を得ることにしま した。わかってきたのは、正子さんはその昔、学校では勉強ができて級長やリレーの選手として活躍していたことです。「先生に贔屓(ひいき)にされていたの よ」と誇らしげに話しました。人一倍負けん気が強く、しっかり者です。車イス生活になり、自由にトイレに行けないことがどんなにストレスか、私たちは気づ きました。正子さんは「しくじったらいけん!」とよく口にしていました。それは、失禁することに対する不安感です。それが頻尿の最大の原因だったようで す。
 そこで、心を落ち着かせ、不安を取り去るかかわり方を検討しました。まず、トイレ誘導表に時間と排尿量を記入して、排尿間隔と尿量の関係を把握しまし た。排尿の間隔が長くなるよう、興味を引き、気持ちを集中できる活動をすすめました。計算プリントやピアノ、しりとり、編み物などです。さらに、回想療法 も取り入れました。その中で表情を観察し、反応を確かめました。
 やがて、スタッフとの信頼関係が築けてきたと感じたころ、頻回なトイレの訴えは軽減しました。表情も穏やかになりました。
 正子さんは寄り添う大切さを私たちに教えてくれました。

(民医連新聞 第1491号 2011年1月3日)

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