医療・福祉関係者のみなさま

2011年1月24日

栄養士ら食養部会も初参加 温かい牛丼とお汁粉をどうぞ 路上生活者のための食事会・健康相談会 宮城民医連

 年末年始は全国各地で、民医連が主催したり、職員が運営にかかわる“年越し相談会”がありました。宮城民医連は昨年一二月二八 日、「路上生活者のための食事会・健康相談会」を仙台市福祉プラザで開き、当事者四五人が参加。栄養満点の牛丼と甘いお汁粉で身も心も温まってもらい、お みやげにおにぎりや衣類、歯ブラシ、缶詰などを提供しました。(新井健治記者)

 「通勤途中の駅で目にする路上生活者のことが、いつも気になっていた。支援をしたくても、一人では何をしていいのかわからない。こうした機会をいただいてよかった」と話すのは、持ち帰り用のおにぎりをにぎっていた丹藤広子さん(みやぎ保健企画・事務)。
 宮城民医連は路上生活者の支援を県連全体のとりくみにしようと、従来行ってきた健康相談に加えて、今回は新たに食事会を企画しました。健康相談会は医師 や看護師、検査技師が主に担い、食事会は県連食養部会と保育士が中心になって準備しました。栄養士ら食養部会が運営にかかわるのは初めてです。
 食養部会は数回の会議を開き、当日のメニューを決めました。簡単に食べられて栄養も豊富なことから主食を牛丼に、「もっと、生野菜を食べてほしい」と キュウリとトマト、レタスのサラダを追加。さらにキノコたっぷりのみそ汁と、ふだんはあまり甘いものをとることができないことを考え、デザートはお汁粉に しました。
 食養部会の古山弘美部会長(セントラルキッチン・管理栄養士)は「県連のニュースを読んで、いつかは路上生活者の支援に参加したいと思っていました。みなさん、もりもり食べていただいて、うれしい」と話します。
 職員は五一人がボランティアで参加しました。ほかにも五二八人からカンパや食事会用の米、さらには衣類、缶詰など支援物資が寄せられ、文字通り県連ぐるみで成功させました。

自立につなげる

 健康相談会には当事者三一人が訪れ、問診や血圧測定、医師三人の診察を受けました。脳内出 血の既往歴がある四九歳の男性は、相談会直後に仙台市の自立支援施設に緊急入所。ほかにも三人が県連事務職員の同行のもと、仙台市議の協力も得て年明け一 月四日以降に医療機関を受診したり、区役所に生活保護を申請して自立への道を歩み出しました。
 三六歳の男性は糖尿病でインシュリン投与が必要ですが、保険証もお金もなく昨年一〇月以降は受診していません。「仙台駅で寝ているが、体中がズキズキし てがまんできないくらい痛い」と話し、民医連の長町病院に入院しました。
 かぜで診察を受けた五二歳の男性は「財産は体だけ。金も家族もないので、健康には気をつかっている。いざという時に相談できる場所があるのは安心ですね」と、ほっとした様子でした。
 食事会・健康相談会は「宮城民医連反貧困プロジェクト」が企画。プロジェクト委員長の藤野英俊さん(坂病院整形外科医)は「社会保障の貧弱さをカバーし てきた会社や家族の機能が失われ、大勢の人がこぼれ落ちて路上生活者になっている。各人の抱えている問題は複雑で、診察も一筋縄ではいきません」と指摘し ます。
 医学部一年生で民医連奨学生の花木安羅太(あらた)さんは、藤野医師の診察を見学しました。「生活背景まで突っ込んで話を聞き、さまざまな病気の可能性 を探していく診察がすごい」と、民医連医師の姿勢に感激していました。

職員教育としても機能

 反貧困プロジェクトは二〇〇八年末の年越し派遣村に刺激を受けて発足。「できる人ができる時にできる事を」を合言葉に、〇九年一月から毎月、「仙台夜まわりグループ」など既存の市民団体の炊き出し会場で健康相談を行ってきました。
 機関紙「守れ人権・なくせ貧困ニュース」(一月時点で三五号)を頻繁に発行して県連内の意識を高めており、〇九年一二月の「路上生活者にチョコレートを 届けようキャンペーン」には五二九人からカンパやチョコが届けられました。昨年六月の「路上生活者等の健康を守る大健診」には六二人が参加しました。
 藤野委員長は「貧困が身近にあることを知らない職員も多い。プロジェクトに参加することで、民医連の理念をつかむことができます」と指摘します。
 反貧困プロジェクト事務局長の神馬悟さん(県連事務局)は「職員の中には、『汚い格好をしているのが路上生活者』との偏見もあります。貧困を体感するこ とが、病いを社会的視点で見るうえで役立つ。プロジェクトは若手職員の教育の場としても機能しています」と強調します。

(民医連新聞 第1492号 2011年1月24日)

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