医療・福祉関係者のみなさま

2011年1月24日

ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい労働)の実現を 働くもののいのちと健康を守る全国センター第13回総会

 働くもののいのちと健康を守る全国センター(労災の防止・職場の安全衛生確などを目的に情報収集・研究・提言を行う)は昨年一二 月三日、第一三回総会を開き、厳しさを増す労働環境に対応するとりくみ方針を決めました。事務局次長の岡村やよいさんに諸課題について聞きました。

悪化する労働環境 蝕まれる健康

 今総会では「すべての働く人にディーセント・ワークを」を打ち出しました。これは、「働きがいのある人間らしい労働」と訳されています。
 いま非正規労働者が三人に一人、長時間労働や夜間労働が野放しにされ、ダブルワークやトリプルワークに従事する人すらいます。メンタルヘルス不全が広が り、うつ病による労災の申請は二〇〇九年に一〇〇〇件を超えました。三〇〇〇人以上の企業の五五%が「心の病が増加」と回答しています(日本生産性本部 『メンタルヘルス白書』)。
 自殺者は一三年連続で三万人を超え、二〇~三〇代の自殺率の高さに加え、「失業」を動機に含む者の増加、三〇~五〇代「無業者」では「有職者」の五倍という深刻さです。
 厚労省が発表した「平成二一年度定期健康診断実施結果」によれば、有所見率は五二%と悪化。ワースト4は、土石採取業の七四%、タクシー運転手など交通 旅客業の七〇%、土木建築業六八%、農林業六七%となっています。中小業者の有病率も深刻で、全商連共済の報告では八三%です。

労働局やハローワークを地方移管してよいのか?

 二〇一一年度は、全国センターがまとめた政策・制度要求の実現へ着実に運動していくことが 課題です。政策の柱のうち、(1)長時間・過密労働の是正、過労死の根絶、(2)労働安全衛生の改善とともに、じん肺・アスベストや精神疾患・脳血管疾患 など労災の救済が喫緊の課題です。
 そして、活動を飛躍させるために地方センターをすべての県に確立することを重点にしています。
 また、「地域主権改革」については「労働局や労基局、ハローワークなどの地方移管」が問題です。労働基準法・労働安全衛生法・労働者災害補償法などにも とづく監督指導の水準が、地域ごとにバラバラになりかねません。さらに、労働の監督については「中央機関の監督及び管理下に置くこと」としているILO条 約にも違反するもので、地域から反撃しなければならないと思います。

誰もが人間らしく働ける労働条件の実現を

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『ディーセント・ワークの実現を―労働安全衛生活動の基本』福地保馬著(学習の友社) 定価一〇〇〇円

 ディーセント・ワークは一九九九年にILO(国際労働機関)総会で二一世紀の目標として提案されました。
 その内容は、(1)一日および週の労働時間、賃金、休日数、労働の内容などが人間の尊厳と健康を損なうものでなく、人間らしい生活を持続的に営めること が必要で、(2)それを保障するために、結社の自由・団体交渉権・失業保険・十分な雇用・雇用差別の廃止・最低賃金などが確保されていることです。
 ILOは、ディーセント・ワークの実現に向け、各国が具体的に条約・勧告として定め、監視機関を置くことを推奨し、条約化しています。日本は批准していない条約が多いのも問題です。
 全国センターでは実現のための実践的な議論を深めながら具体化していくことを呼びかけています。このほど、全国センターの福地保馬理事長の著作『ディー セント・ワークの実現を』が完成しました。シリーズ「健康で安全に働くために」の既刊三巻とともに活用してください(『「慢性疲労」そのリスクのマネジメ ントを学ぶ』『快適職場のつくり方』『職場で活用できる労働安全衛生法の基礎知識』いずれも学習の友社刊)。

(民医連新聞 第1492号 2011年1月24日)

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