民医連新聞

2007年7月2日

記者の駆け歩きレポート(14) 地域包括支援センターは区民のよろず相談所 センター同士も手をくんだ 京都・紫竹地域包括支援センター

 高齢者の最初の相談窓口になり、地域の中核機関として、介護予防や地域のケアマネ支援などを担う地域包括支援センター。しかし、市区町村の 直営でなく委託をする場合が多く、しかも少ない委託料のため十分な人数が配置できず、矛盾をかかえています。制度が始まって一年。京都市紫竹地域包括支援 センターは、月平均三九〇件を超える相談を受けます。「地域の期待に応える仕事がしたい」。ほかのセンターと協力して、行政に悩みを出すなか、新しい絆が 育ちはじめました。(板東由起記者)

介護の窓口できた

 「最近歩きにくく、杖がほしい。どこで買えばいいですか?」「介護サービスを利用したい」など、高齢者から相談が。相談の八割は、介護保険関係です。
 ときには、「認知症の人がドアを開けてくれない」「隣の家の人が一人で火を使っていて危ない」など地域住民や民生委員からの相談も。「まるで地域のよろ ず相談所」と話すセンター長の甲田由美子さん。警察、市役所、医療機関、ケアマネジャーなどからも持ち込まれます。それだけ、介護にまつわる相談場所がな かったのです。
 紫竹では、看護師二人、ケアマネ一人、社会福祉士一人ですべて対応します。毎朝、主任ケアマネの今井昭二さんを中心に情報共有をします。休憩中の話題も相談のことばかり。毎日が「事例検討会」のようです。

「このままではあかん」

 京都市は、介護保険の新規申請の認定調査も包括センターに委託。だから、介護保険の「か」とくれば、相談者の話を最後まで聞かず、すぐセンターに振ってきます。
 住民に「相談できるところが身近にできてよかった」「市役所はきちんと対応してくれない」と言われるたび、「いつでもご相談下さい」と職員はにっこり笑 顔。でも、心の中では「こんな少ない職員で、どれだけ対応できるんやろか?」とヒヤヒヤものでした。
 毎月、福祉事務所から見ず知らずの「要支援」と認定された人の名簿がドサッと容赦なく届きます。すぐに介護保険の説明に行きます。戻ると膨大な支援計画 書の作成がまっています。書類の山、山、山。「このままではあかん」。相談者に個別のていねいな対応ができなくなってしまう。不安になった甲田さんは、市 内にあるほかの包括支援センター六〇カ所の状態を聞いてみることにしました。
 アンケートを配った二週間後、「本来の業務がすすまない。一年後が不安」「忙しすぎて労務管理ができない」など、苦労や行政への要望がびっしり書かれて戻ってきました。まわりも同じ悩みをもっていたのです。

市と交渉し改善

 これをまとめ、共同で増員や体制整備を京都市に提案しました。四回懇談した結果、「ケアマネ一人あたりの担当上限を設定し、委託費用は今より下回らない ようにする」と約束してもらいました。懇談の中では「よろず相談所」のように毎日集まる地域の問題を説明し、優れたセンターの役割を強めて続けさせてほし い、と訴えました。
 このとりくみで、ほかのセンターとの間に絆が生まれました。「行政が動くのを待っていてはダメ。こんなのおかしいと思ったら、みんなでアクションを起こすことが大切。そうしたら少しずつ変わるのですね」と甲田さん。
 紫竹包括支援センターは、いつの間にか地域のリーダーを担っていました。


地域包括支援センター…介護保険制度の見直しで、二〇〇六年四月から自治体が設置することに。高齢者の状態変化に応じて、介護保険だけでなく、地域の保健・福祉・医療などの必要なサービスが受けられるよう支援します。現在、民医連の地域包括支援センターは全国で六〇カ所(約一%)あります。

(民医連新聞 第1407号 2007年7月2日)

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