副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2007年7月2日

副作用モニター情報〈271〉 TS-1(ティーエスワン)による重篤な副作用の回避について ~その2~

前号では、ティーエスワンによる血液障害の事例から、重篤な副作用を回避するための注意について報じました。第2報では、化学療法剤で血液障害が生じた際の対応についてのべます。
 化学療法によって生じる血液障害、特に好中球減少症は、出現頻度が高く、かつ致死的な経過をたどりがちです。事前に、このような場合にとるべき最善の方 法をガイドラインとして明示し、徹底することは、重篤な事態を避ける手だてとなります。
 ガイドラインで決めておく具体的内容は、(1)初期診断として必要な検査項目。(2)初期治療のエンピリックセラピーとして推奨すべき抗生剤(連鎖球菌・緑膿菌を含むグラム陰性桿菌をカバーする薬剤、MRSAが疑われる場合等)。(3)G-CSF製剤の使用の目安。(4)「初期治療後の薬剤変更」について(3~5日後に判断し、発熱状況や起因菌同定、真菌感染症の有無などから、その後の治療指針)などです。
 また、全身管理のための個室管理や対策チームの結成、インフォームドコンセント、症状に応じた他治療法や検査などを決めておき、即時の対応が確実に行われるよう明確に示しておかなければなりません。
 近年、強力な経口抗ガン剤が登場し、外来での化学療法の経験も蓄積し、在宅で癌治療を行う例が増えています。在宅での治療は、患者の日常生活が保たれる という利点がある一方で、重篤な副作用を早期に発見しにくいという危険性もあります。
 抗ガン剤使用中の血液障害は急速にすすみ、致死的になりかねません。各施設で、このような事例に遭遇した場合、誰もがいつでも最善の策を講じられるよう 診療ガイドラインを策定し、全科が協力し組織的な対応ができるようにしましょう。
 また、紹介入院や診療所で化学療法をしている患者では、患者情報が掌握しにくく、迅速な対応ができない場合もあります。医療連携が円滑に行われるような流れを確立する必要があります。

(民医連新聞 第1407号 2007年7月2日)

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