医療・福祉関係者のみなさま

2011年2月21日

相談室日誌 連載321 「家族の存在」に助けられたAさん 大渕慎一(秋田)

 Aさん(五〇代・男性)は脳出血を発症し、リハビリ目的のため市内の総合病院から当院へ転院してきました。重度の右片マヒがあり、歩行が困難でした。
 Aさんは市内で生まれ、中学卒業後は職を転てんとしていました。発症する四年前から生活保護を受けてアパートで一人暮らし。結婚歴はありません。連日、 近隣の住人が集まり多量に酒を飲むという生活で、部屋は昼間から酒場と化していました。酒飲み仲間にお金を貸して返済されない、などトラブルも抱えていま した。家賃を滞納し、入院時にはアパートは退去した状態でした。
 汚れた室内のリフォーム費用を大家から請求され、福祉事務所と相談し費用の一部を保護費として支給してもらい、Aさんは安心した様子でした。
  家族は県外に姉が二人いますが、交流がほとんどない状況でした。姉たちは「頻回に面会は無理」と話しましたが、できることは協力すると言ってくれました。
 Aさんは年齢が若いこともあり、入院の半年後には四点杖と補装具を使って歩けるようになりました。病棟で嬉しそうに「こんなに歩けるようになった」と歩 いて見せてくれました。リハビリが順調にすすんだので、復帰先について相談すると、Aさんは「一人暮らしは大変なので、リハビリをしながら生活できる施設 に入所したい」という希望でした。 リハビリ可能な障害者支援施設を紹介すると、入所を希望したので早速、姉に連絡して来てもらい、いっしょに施設を見学 しました。市役所での入所手続も姉にしてもらい、一カ月後、入所しました。
 近くに身寄りがいないAさんでしたが、姉の協力が得られたため、私の方も退院援助がスムーズにできました。
 病気を機に、疎遠だった家族との関わりが再開する場合があります。相談や援助をすすめる上で、家族の存在は大きいと感じています。一方で、「無縁社会」 という言葉に象徴される状況に置かれた患者さんもいます。今後も家族のいる人、いない人、様ざまな患者さんと出会うと思いますが、希望する復帰先に行ける よう、他職種と連携しながら援助していきたいと考えています。

(民医連新聞 第1494号 2011年2月21日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ