医療・福祉関係者のみなさま

2011年2月21日

実践かさね磨きかけよう 新綱領を「原動力」に民医連運動を推進する交流集会

 全日本民医連の「新綱領を原動力に民医連運動を推進する交流集会」が一月三〇日に東京で行われ、二六〇人が参加しました。オープ ニングは「お国言葉で語る民医連綱領」で、青森から熊本まで一二県連の理事が豊かな方言で綱領を読み継ぎました。続いて全日本民医連副会長の堀毛清史医師 (北海道勤医協理事長)が「民医連綱領 その源流と未来~綱領を深読みする~」と題して講演。綱領に即した実践や綱領学習の工夫など全国から一三演題の報 告がありました。(新井健治記者)

「綱領を深読みする」講演

 堀毛さんは、新綱領の文章一つひとつ、文字一つひとつが決まった歴史的な経緯や議論の過程、込められた職員の思いを解説。行間まで深読みすることで、綱領を実践に活かすことができると強調しました。
 一九六一年制定の前綱領は、中文・目標の第一項が「患者の立場に立って親切でよい診療を行い」でした。「患者の立場に立つ医療」は、多くの医師が特権階 級だった前綱領制定当時以降、民医連の運動をすすめるうえで大きな役割を果たしました。その後、医療を受ける権利が国民意識に浸透する中で、「患者の立場 に立つ」とは患者の痛み・苦しみに寄り添うことにとどまらず、患者の人権を守ることとの認識の発展があり、さらに「共同のいとなみ」へと大きく前進したの です。
 そこで新綱領では「患者の立場に立つ」を前文第三段落の「あゆみ」に記述し、その精神をしっかり引き継ぎながら、中文・目標の第一項に「共同のいとなみ」を掲げることとなりました。
 堀毛さんは「医療や介護の従事者は困っている人に共感する『心やさしい人』が基本ですが、『なぜ、その人が困っているのか』と原因まで考え、原因から改善するのが民医連の特徴です」と話しました。
 また、前綱領本文にはなかった「人権」が、新綱領の目標の一番目に位置づけられたことも注目すべき点です。前綱領制定時は人権という言葉になじみがな く、この言葉を入れることに難色が示された経緯がありました。新綱領ではよって立つ基盤に日本国憲法の理念、特に基本的人権の重要性が強調されました。

使えば味が出る綱領

 綱領は文章表現のちょっとした違いに、運動や議論の過程が反映されています。 たとえば、新綱領の前文を読むと第三段落の各文末に特徴があることがわかります。三つ目までが「広げてきました」「とりくんできました」「運動してきまし た」と過去進行形であるのに対し、四番目の文だけ「民主的運営をめざして活動しています」と現在進行形です。
 文面の差はわずかですが、背景には大きな違いがあります。三番目までの医療・介護の実践や社会保障運動は、活動が過去から引き続き現在まで存分にとりくまれているとして、過去進行形を使いました。
 一方で、民主的運営に関しては、いまだ十分にとりくみきれていないのが私たちの到達であるとの考えから、現在進行形にしました。堀毛さんは「今までに大 きな成果を挙げたと表記できない、今まさにこの課題にとりくんでいるとの意味をこめました」と説明しました。
 最後に綱領を「男の鞄」にたとえ「皮の鞄は使えば使うほど、味が出る。綱領も額に入れて飾っておくのではなく、積極的に実践する、しっかり使うことでよ り素晴らしくなります。私たちには『綱領を成長させる』歴史的な役割があります」と強調しました。


 講演後にはトリオセッションが行われ、参加者が三~五人のグループに分かれ講演の感想や質問を出し合いました。トリオセッション後の主な質問と、堀毛さんの回答です。
●若者に綱領をどう伝えるか?
 私が看護学生に講演した際は、綱領をそのまま解説するのではなく、背景にある地域の実情、患者の実態を話しました。地域住民に役立つ看護師になることと 綱領の関係を明らかにすることで、一八~一九歳の若者が理解してくれました。いま、若者の間で「前向き民医連」という言葉が使われています。今までの綱領 学習の定番「私と民医連」は振り返りの話です。歴史から学ぶことの重要性とともに、若者は「これからの私と民医連のあり方を考えたい」と思っています。 日々の業務と綱領との関係を深めることが一つのヒントになると思います。
●なぜ、理念や目標ではなく、「綱領」なのか?
 民医連の理念は綱領前文の第一段落に当たります。綱領には理念や目標はもちろん、組織の性格、歩み、目標達成の道筋なども明記しており、「民医連綱領」の名称にしました。
●前綱領から「すべての民主勢力と手を結んで」の文章が削除された理由は?
 民主勢力はもちろんですが、医師会や自治体、町内会などとも幅広く協力・連携して運動をすすめるとの立場を表すため「多くの個人・団体と手を結び」としました。

綱領学習の工夫と実践報告

介護事例検討からの学びと民医連職員としての成長
高野敏充さん・勤医協菊水在宅総合センター(北海道)副センター長

 民医連歴の浅い職員が多いため、事例検討会を毎月行い実践を綱領に結びつけて学んでいます。検討会の積み重ねから、利用者・家族の願いに寄り添って事業 を拡大してきました。二〇〇九年九月から年中無休の訪問看護を始め、昨年六月から午後四時までだったデイサービスを六時半まで延長しました。今年四月から デイの日曜営業も始める予定です。
無料低額診療事業からの問い
鮎澤ゆかりさん・諏訪共立病院(長野)MSW

 二〇〇九年九月から無料低額診療事業を始めました。無低診をきっかけに、これまでどこにも相談できなかった人が公的制度につながるなど、相談者に生活を 立て直す力が生まれています。膨大な業務の中で、「事業の対象か否か」を見極めることは難しく、事業所SWの力量が問われることもわかりました。
 一方で、「方針だから」無低診にとりくむのか? 事業にとりくめば、綱領の「無差別・平等の医療と福祉の実現をめざす」ことになるのか? との根源的な 問いが生まれました。答えは「医療は誰のものか」「誰が責任をもつのか」を、事例を通し全員で追求し続けて得られるものだと思います。無低診という〝切 符〟を手に、あるべき医療や社会保障をめざしていくことが、この事業にとりくむ意義だと考えています。
研修医として働きながら感じたこと・考えたこと
長哲太郎さん・耳原総合病院(大阪)研修医

 私の指導医は路上生活者が来院したと聞くと、意気ごんで診療に向かいます。社会的弱者を診る際、一歩引いてしまうのではなく、すすんで前に出る医師の姿 に民医連を感じました。綱領に掲げた患者とふれあう診療の姿そのものが、医学生の心に響きます。さらに事例を積み重ねることで、民医連に合流する医学生が 増えるのではないでしょうか。

(民医連新聞 第1494号 2011年2月21日)

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