民医連新聞

2007年9月3日

相談室日誌連載246 身寄りのないAさんの死後は 水川 えい子

Aさん(七〇代・女性)は、夫と生活保護を受けながら生活していました。しかし、夫が亡くなったあと、遺族年金とAさんのわずかな厚生年金が生活保護の基準額を超えたため、打ち切られました。
 貯金のないAさんは、月末にはお金が底をつき、ギリギリの生活が続いていました。一時は健康状態も悪化し、入退院を繰り返していました。徐じょに認知症 が進行し、お金の管理もできなくなったため、地域福祉権利擁護事業と成年後見(こうけん)制度の申請を検討していたところ、Aさんは肺炎にかかり、再度入 院になりました。
 在宅での生活は難しい状態でしたが、「家に帰りたい」というAさんの希望と、施設に入るお金がないという理由で、とりあえず在宅復帰をめざし支援していました。
 その後、医師が「もう家には帰れない」と判断し、Aさんも納得の上、療養型病院に申し込みました。しかし、転院までに時間がかかり、Aさんの状態はどん どん悪くなっていきました。「もう長くはない」と医師から言われ、死後の手続きをしてくれる家族を探すことにしました。
 唯一の息子さんは行方不明、そのほかの家族とは絶縁状態で、誰も協力してくれません。これでは市に相談するしかないと思い、連絡したところ、どの課も 「うちの担当ではない」の一点張り。結局、家の解約の手続きや葬儀社への依頼などは、私が対応しました。そして「最後の納骨だけは、家族がいない人は市の 許可がいる」と知り、市にもう一度相談しました。市はそれでも、「それも担当しているところはわからない」と言いました。
 困りはてて葬儀社へ相談すると、民生委員の同意書があれば納骨してもらえることがわかりました。民生委員さんにお願いし、なんとか同意書を書いてもらいました。
 その次の日、Aさんは静かに息をひきとりました。
 墓地埋葬法第九条では「身寄りがない者、または判明しないときは市町村長が埋葬・火葬をする」となっています。身寄りのない人でも、自分の最期を心配しなくてもいい世の中にしていかなければなりません。

(民医連新聞 第1411号 2007年9月3日)

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