民医連新聞

2007年10月1日

フォーカス医療・福祉の実践(15) 歯科がない病院に歯科衛生士を配置 入院患者の口腔ケア改善 青森・健生病院

  青森・健生病院のリハビリテーション科は、二〇〇六年四月、病棟スタッフに歯科衛生士を迎え、口腔ケアに力を入れています。歯科のない病院で、歯科衛生士 を配置したのは県内初。口腔内の改善や肺炎予防など成果があがっています。歯科衛生士・原田千明さんの寄稿です(一一月の全日本民医連学術運動交流集会で 発表予定)。

 歯科衛生士を配置するプランは、地域連携室のスタッフが口腔ケアの研修を受けたことが始まりで す。おりしも回復期リハビリテーション病棟ができ、「口腔ケア・嚥下(えんげ)チーム」を立ちあげた時でした(現在、チームは医師二人、看護師八人、栄養 士、言語聴覚士、事務、歯科衛生士、各一人の計一四人で構成し、月一回ミーティングを行なっている)。
 私は、歯科医院に一三年間勤務しながら、月四回、弘前市保健センターで一歳半と三歳児の歯科検診とブラッシング指導にも携わっていました。「入院患者の 口腔ケアに力を入れたい」という病院からの誘いがあり、歯科医師のいない病院で、とくに高齢者の口腔ケアという未知の世界に興味を持ち、勤務を決めまし た。
 しかし、勤務して驚いたことは、患者さんの劣悪な口腔内環境でした。スタッフが忙し過ぎて、口腔ケアの必要性を感じながらも、とりくみに費やす時間がないのが実情でした。

ブラッシング中心に

 そこでまず、言語聴覚士と相談し、口腔アセスメント表と依頼書を作成し手順を決めました(表1)。これまで清拭が主であったケアに歯ブラシによる清掃法を取り入れ、チームで話し合いながら最低ラインの基準をつくりました(表2)。
 また、安価で使いやすい歯ブラシを売店に置くなど、口腔ケア用品を揃え、各病棟バラバラだった清拭液も統一して使用することにしました。
 そのほかブラッシング指導、義歯管理などについての勉強会を実施。簡単な手技や必要性など基礎的なことを、口腔ケア前・後の写真で分かりやすく比較する などして、理解してもらうようにしています。勉強会は、病棟のほか新人の医師・看護師、関連施設や在宅のスタッフ、看護学生にも行っています。

表1 口腔ケア依頼から実施までの業務手順

依頼書を記入し、歯科衛生士(DH)へ届ける
              ↓
DH (1)アセスメント、口腔ケアの実施
    (2)依頼書の評価欄、口腔ケアアドバイスを記入
    (3)依頼書を病棟へ持って行き、コピーをDHが保管
    (4)口腔ケア方法を担当看護師(NS)へ助言、指導する
              ↓
NS (1)DHといっしょに口腔ケアを行う(1~2回)
    (2)DHの助言、指導のもと、口腔ケアを行う
              ↓
DH (1)定期的(基本は1~3週間に1回)に再評価を行う

 

地域の歯科医と連携

 患者さんに歯科治療や義歯調整などの必要が生じた時は往診を依頼します。市内の歯科医師とは長年培(つち)かった関係もあり、スムーズに連携がとれています。
 病院と連携のある歯科医師の中に嚥下について熱心な医師がおり、VE(嚥下内視鏡検査)、VF(嚥下造影検査)に参加してもらい、口腔機能評価も実施し ています。今年二月には、鼻咽腔閉鎖不全の患者にベッドサイドでMPLP(モバイル型パラタルリフト)を作成し、装着後の定期評価も行ってもらいました。 MPLP作成は私たちにとって初の試みで勉強になりました。

口腔状態に合ったケア

 この一年半の前進面は、(1)ケアにブラッシングが加わった、(2)口腔ケアに対する意識が向 上し、口腔ケア依頼書の活用で連絡が円滑になった、(3)患者の口腔状態に合ったケアと速やかな歯科治療で口腔環境が改善された、(4)肺炎を繰り返す患 者が減少した、などがあげられます。
 以上、少しずつですが当院においてもとりくみの効果があがっていると確信しています。歯科衛生士として、今後も「口腔ケア・嚥下チーム」を中心に、患者 さんに喜ばれるよう、口腔ケアの質の向上をめざしながら、単に口腔ケアだけに留まらず、そこから患者さんの健康状態を把握できるような知識も身につけるよ う努力したいと思っています。

表2 口腔ケア基準

1、残存歯がある人
  ・食前、口腔内が汚れていないか確認する
  ・食後、ブラッシング、うがいを行ってもらう
2、無歯顎の人
(義歯を装着している人)
  ・食前、義歯が汚れていないか確認する
  ・食後、うがいを行う
(義歯を装着していない人)
  ・食後、うがいを行ってもらう
  ・うがいが困難な方はガーゼで清拭する
3、義歯の管理
  ・食後、流水下にて 歯ブラシで義歯を洗う
  ・就寝時は、水に入れて保管する

(民医連新聞 第1413号 2007年10月1日)

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