民医連新聞

2007年10月1日

相談室日誌 連載248 働いていても貧困の現実 平野 康司

病弱な母と精神障害のある娘さんと三人暮らしのAさん(五〇代・男性)は、建設会社で働いていました。しかし、七月の暑い日に職場で倒れ、当院を受診しました。脱水と栄養失調でした。Aさんは、別に暮らしている弟夫婦に連れてこられました。
 弟夫婦から話を聞くと「最近交流がないから詳しいことは分からない。以前は会社の健康保険に加入していたけれど、会社側の一方的な都合で、途中から健康 保険を切られたと聞いている。今はどうなっているか分からない」とのことでした。Aさんの会社に問い合わせてみると、「今日は土曜日なので担当者が休み。 詳しいことは分からない」と言われました。
 Aさんは入院が必要な状態だったので、月曜日になってから健康保険の有無を確認することにして、即日入院となりました。
 その後、四~五日経ってから確認がとれましたが、やはり会社の健康保険から外されていました。Aさんはこの一~二年間は無保険で、症状があったのに我慢して受診しなかったことが分かりました。
 弟夫婦と相談して国民健康保険に加入することになり、手続きを急ぎました。民生委員や社会保険労務士の援助もあり、すぐに国保の加入はできました。しか し、保険税の滞納があるとみなされ、限度額認定証(七〇歳未満の人が入院した時、窓口での支払いが限度額までに減額される)の交付をしてもらえませんでし た。鹿児島市は滞納世帯には発行しないからです。
 Aさんは入院期間が二カ月以上にもなり、現在も入院中です。現在は生活保護を受けることができましたが、それまでの期間の負担額が八万円以上になりました。
 私は、Aさんが初めて受診した時に「会社に勤めている」と聞き、すぐに生活保護が必要になる状況であることまで考えませんでした。「なぜあの時、生活状況を十分つかまなかったのか…」と、今も後悔しています。
 「働いているのに貧困」という人が急増しています。今後は早期に対応し、社会資源を最大限に利用しなければならないと考えます。また、国保問題や無保険の問題についても改善運動もすすめなければと思いました。

(民医連新聞 第1413号 2007年10月1日)

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