医療・福祉関係者のみなさま

2011年9月5日

駆け歩きリポート “気になる番組”の舞台裏 出演する2年目研修医の収録に密着

 健康や医療をテーマにしたTV番組は最近珍しくありません。しかし、その中で実に気になる番組が。それが「総合診療医ドクター G」。著名な総合診療医が登場し、実際に診療現場で診た症例を元に解答者の二年目研修医が病名を特定していきます。そこに民医連の研修医が多数出演してい ます。八月一八日放送分の収録に参加した長野中央病院の研修医、原田侑(ゆき)典(のり)さんに同行し、収録の舞台裏をリポートします。はたして研修医は 無事に答えにたどりついたのか。(矢作史考記者)

 七月一〇日、午前一〇時、東京九段下駅に原田医師があらわれました。NHKの番組ですが、収録場所は渋谷の放送局ではなく、外のビデオスタジオです。
 原田医師とともに、指導医の小島英吾医師、医局事務の岩下ちひろさん、県連医学対の出河進さんらが集まりました。「番組はちゃんと見たことがなかったん ですけど」と、スタジオへいく道中の原田医師はクールな微笑み。
 スタジオの壁に貼られたスケジュール表には、八時すぎから照明やカメラの調整などがびっしり。
 セットはテレビの印象よりも小さなスペースでした。大型のクレーンカメラをはじめ、さまざまな角度から出演者を撮るためのカメラが何台も。「セットも昨 年より、豪華よ」とプロデューサーの永井祐子さんがささやきます。
 ここで出演者の打ち合わせに入る原田医師とはしばしお別れ。見学者は他の部屋で待機。収録の見学が自由と聞き、興味をもった医学生たち三人もスタジオに駆けつけ合流しました。
 原田医師のほか、男性一人、女性二人が出演します。研修医たちは控え室で記念写真を撮ったり、アドレスを交換しあったり。長い待ち時間の間に仲良くなっ ていました。ほかの研修医たちには付き添いはなく、民医連の集団に「家族みたいだね」と言われました。
 リハーサルでは、立ち位置や入場するときの注意などを細かく確認。この段階で初めて今回のドクターG、金城光代医師(沖縄県立中部病院)と顔を合わせました。
 いよいよ本番。控え室から出てきた原田医師は白衣に着替えていたうえ、メガネまでかけています。男性二人の顔が似ているとスタッフが気付き、メガネをか けることにしたそうです。テレビではこんなことにも注意が払われるのです。
 放送どおりに患者さんの様子が再現VTRで流れ、その情報を元にドクターGの主導で研修医たちが病名を推理していきます。今回の患者の主訴は「胸が痛 い」。VTRでは患者がストレスを受けている場面や、電車の中で倒れたエピソードが。そこで研修医たちは最初の診断として、過呼吸発作や胃潰瘍、原田医師 は肺血栓塞栓症をフリップに書きました。
 ドクターGは「総合診療の鉄則は、命に関わる病気をまず疑うこと。その中で考えられないものを除外するのが大事」とコメント。
 二度目のVTRでは、生理が重い、そして首が腫れているという情報が追加。ここで研修医たちは首の腫れの感触に似た「片栗粉が入った袋」で感触を確かめ ながら、病名を推定した根拠を問うドクターGの質問に答えます。
 スタジオはさながら公開カンファレンス。これがこの番組の目玉です。そして研修医たちは全員、「異所性子宮内膜症による気胸」という診断にたどりつきました。
 こんなことも。収録の合間に司会の玉ちゃんが研修医に「医師にとって必要な科目は何だろう?」と質問。原田医師が「道徳です」と答える場面も。
 収録終了は一六時過ぎでした。見学していた小島医師は「僕も正解できなかった。原田先生はがんばった。今以上に精進してほしい」と一言。原田医師は 「VTRの情報だけで診断するのは難しかった。でもドクターGが考え方を教えてくれました」と安堵の表情を浮かべていました。

総合診療医 ドクターG

【放送】NHK総合 毎週木曜午後10:00~10:43
■出世魚のような番組…制作者の話
 ドクターGは、NHKの番組募集に制作会社ホームルームが提案して生まれた番組だ。2年前にパイロット番組(開発番組)で放送して好評で、2010年に BSのレギュラー番組に。そして今回、総合テレビへ。放送時間も15分拡大された。
 「出世魚のような番組」と制作統括の中村雅人チーフプロデューサー。「NHKの番組は『分かりやすさ』を求めて制作するのが常ですが、ドクターGでは 『分かりやすさ』を求めません。収録で初めて顔を合わせたドクターGと研修医の議論は、展開の分からないドキュメンタリー。そこが視聴者には新鮮なので しょう」と、分析する。
 また解答者の2年目研修医たちについて「医師養成に熱心な病院の所属で、レベルの高い研修医たち。本番前は緊張でガチガチですが、『目の前で病人が出 て、あなた方が救うんだと考えよう』と声をかけると、普段の顔に戻ります。」と。
■「赤ひげ」っていたんだね
 司会の浅草キッドの2人もこんな風に。「バラエティーだけど番組はガチです。ドクターGはいい人ばっか。『赤ひげ』はいたんだ」(玉ちゃん)「若者のダ メっぷりを笑いものにするテレビ番組は多いですが、出演者の研修医たちを見ると、若者はダメじゃないと思います」(水道橋博士)
(木下直子記者)

(民医連新聞 第1507号 2011年9月5日)

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