民医連新聞

2007年10月15日

もうガマン限界 障害者自立させない支援法

 「障害者自立支援法」が施行されて一年半。「自立支援どころか自立阻害だ」と、障害者の怒りは日ましに強まっています。運動におされ、民主党が「応益負担廃止法案」を今国会に提出。野党の歩調がそろいました。成立は切望されています。
(川村淳二記者) 

一割負担の重さ

 障害者の外来での自己負担は、五%から一〇%に倍加しました。所得の低い人には負担の上限があ りますが、それでも重い。「半分以上の患者さんで自己負担が増えました。受診回数を減らすなどの影響が出ています」。熊本・菊陽病院の相談室の村上令さん (精神保健福祉士)は話します。
 日本障害者協議会が行った影響調査(〇七年三月発表、以下「調査」)でも、自立支援法の実施で外来患者さんの六割に一割負担が生じ、五割以上が「自己負担が増えた」と答えています。

支給される報酬1/3に

 きくよう地域生活支援センターは補助金が、二一〇〇万円から町の委託費七〇〇万円だけに激減。 職員を一人減らしました。しかも利用者相談の報告、支援プログラムづくりと、業務量は逆に増えました。職員が業務に追われ、利用者から「職員が話してくれ なくなった」と不満も出ています。「今の委託費だけでは不足」と施設長の大津留道子さん。法人の持ち出しでがんばっています。

賃金そっくり利用料

 NPO法人やすらぎ福祉会の「やすらぎハウス」は、障害者の就労継続支援事業所です。たこ焼き やおはぎなどを製造・販売し、障害者の工賃は一日五〇〇円でした。自立支援法ができて、利用者は一日四六〇円の利用料を支払うことになってしまいました。 工賃から利用料を差し引くと四〇円しか残りません。
 「これでは働く意欲もなくなってしまう」と、利用者を増やし、病院内の売店の運営をひきうけ、近くで喫茶店を開店し、畑で野菜をつくって販売するなど、 仕事を増やしました。ようやく工賃が一日一〇〇〇円になり、利用料を差し引いて、以前とほぼ同額の五四〇円を支払えるようになりました。

家族支援に逆戻り

 病院併設のグループホーム「さくら並木寮」でも入居者は月二万六二〇〇円の家賃に加え、新たに一日一八五円の訓練費を支払わなければなりません。
 また、事業者は支援費の給付が日割りになったため、入居者が入院や外泊すると、その日数だけ収入が減ってしまいます。このグループホームは、入居者が病 状の悪い時は入院し、安定したら退所して、アパートなどで自立して生活するための訓練の場です。職員は矛盾を感じています。
 おまけに以前は、入居者はグループホームを居住地として生活保護の申請ができました。自立支援法後ではそれができなくなりました。行政は「グループホー ムの入居を申請する段階で、家族の支援を受けるのが条件だ」というのです。わけが分かりません。
 障害者本人の収入は一〇万円未満が五七%。入所施設では平均一万五五四〇円の負担増となっています(「調査」)。障害者には生活保護も大切な社会保障の 一つです。「社会保障やバリアフリーがだいぶ後退してしまった」と、菊陽病院・相談室の赤星雅義さん(精神保健福祉士)も憤ります。
 今月三〇日、東京・日比谷野外音楽堂で、全国の障害者団体が大フォーラムを開きます。障害を自己責任と見て、支援を「益」という変な「応益負担」は撤回しかありません。

(民医連新聞 第1414号 2007年10月15日)

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