民医連新聞

2007年11月5日

フォーカス医療・福祉の実践(16) 模擬患者(組合員)の協力で 手術前オリエンテーションを点検 群馬・前橋協立病院

 手術を前に、患者の不安を鎮め心の準備を援助することは、手術室を担当する看護師の大切な仕事です。群馬・前橋協立病院では、緊 急、日帰り手術を除き、術前訪問率は一〇〇%です。今年三~四月、説明の仕方が適切かどうか、組合員に「模擬患者」として協力してもらい、検証し改善しま した。第八回学術運動交流集会で発表を予定する岡田育恵さん(看護師)の寄稿です。

 患者が安心して手術に臨めるよう、心理的準備を促(うなが)し情報を得るため、看護師が術前オリエンテーションを実施します。当院では、当日の外回り担当の看護師が時間を確保し、訪室しています(看護師五人、うち新人一人)。
 患者アンケートでは五段階評価で「良かった」という答は七八%でした。そこで、組合員五人に模擬患者になってもらい、説明の仕方などを評価することにしました。
 方法は、一人の看護師が模擬患者全員に、手術ごとに通常使用しているオリエンテーション用紙にそって説明しました。会話を録音し、終了後に模擬患者・看 護師はアンケートに記入、面談しました。また、看護師はお互いの録音を聞いて検討しました。オリエンテーション用紙には写真と説明手順が示されています。

よい資料と明るい笑顔

 まず、看護師による説明の違いがあったか、についてです。
 模擬患者の評価は「看護師の人柄は違うが、ていねいで熱心、不安や緊張を解くよう説明した点では同等」「しっかりした資料があるので、説明もれがない。 なかでも笑顔が明るい人は好感があり、安心感をもった」「看護師の個性は感じたが、患者への配慮は皆すばらしい」「経歴年数が異なるからか、同じ印刷物に よる説明だが少しずつ違った感じ」などでした。看護師も自他の説明の差に気づきましたが、予想ほど差はありませんでした。
 新人看護師の説明については、「幅広い知識や患者が知りたい細かい点で不十分さがあるが、一通りの説明はできている」という評価でした。
 患者の満足度については、模擬患者に一〇項目を質問し、五段階で評価してもらいました。質問項目は、説明時の看護師の表情、話のスピード、時間、わかり やすさ、聞いて気持ちが落ちつくか、などです。その結果は全項目が平均で四以上でした。
 また、次の意見が出されました。「専門的な話より、スタッフの思いやりのある言葉や態度が大切」「解剖図があるとわかりやすい」「医療者がふだん何げな く使っている言葉が患者には伝わらないことがある」「安心させてもらうことが何よりありがたい」「オリエンテーションは静かで落ち着ける場所がよい」など です。

より温かく人間味ある対応を

 この結果を検討し、対策を取ることにしました。
 一つは、オリエンテーションをする環境への配慮です。場所について、患者の意向を確認し、個別に対応するようにしました。
 二つめは、学習と教育を継続することです。今回、看護師は「組合員さんを本当の患者と思って緊張感を持ってできた」「練習とはいえ真剣になって何度も繰 り返し説明してしまった」といいます。模擬患者になった組合員は、病気や手術の経験もあり、患者に近いリアルな対応をしてくれます。新人が慣れ、ベテラン が振り返るために、組合員や職場スタッフの協力でロールプレーイングすることも一つの方法です。
 また、新たにパンフレットなどを作成しました。訪問前に一読する五カ条の「私たちの心得」(図)、説明もれを防ぐ「術前訪問チェックリスト」をつくり、視覚的に情報提供する「トラの巻」も少しずつ充実させています。
 本研究後、私たちの意識に変化がありました。受け持ち意識が強くなり、ゆとりを持って訪問し、患者の反応を確かめながら説明する、などです。
 私たちにとって手術は日常ですが、患者にとっては非日常です。知識の提供も必須ですが、まずは患者の気持ちを理解し、一人ひとりに「人間味・温か味」をもって接する手術室をめざしたいと考えます。

(民医連新聞 第1415号 2007年11月5日)

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