民医連新聞

2007年11月5日

相談室日誌 連載250 患者さんの心配事は入院費… 上山 萌生(もえみ)

当院では、専門の医師による糖尿病外来を週二回行っているほか、糖尿病の教育入院を受け入れています。
 Aさん(六〇代・女性)は、「目が見えにくくなってきた」と、当院を受診しました。糖尿病でした。受診の翌週から入院し、インスリン治療を始めました。
 Aさんはパートを雇い、小さなスナックを経営しています。五年前から糖尿病になっていることは知っていたようです。しかし、客が少なく、食べていくのも ギリギリの生活で治療に行けませんでした。生活が不規則で病気が進行し、最近は体調の悪い日が続いていたようです。
 Aさんの心配事は入院費でした。まず、高額療養費を申請しました。しかし、課税世帯だったため限度額は八万円。Aさんは「とても支払える額ではない」と愕然としました。
 Aさんは足が不自由なので、身体障害者手帳を申請して、医療費助成を受けられないか検討しました。しかし障害が軽く、該当になりませんでした。役場に相 談したところ、「世帯主の変更をすれば非課税になる。医療費も軽減できる」と知り、すぐに手続きしました。しかし、非課税になるのは翌月以降で、すぐに医 療費は軽減しませんでした。
 Aさんは「お金もかかるし、店も心配」と、予定を早めて退院しました。外来で治療を継続することを約束しましたが、まだ一度も受診していません。
 Aさんのようなケースは当院でも珍しくありません。糖尿病は継続した治療が必要で、中断すると命にも関わります。それなのに医療費が高額で、治療したくてもできず、病状が悪化する患者さんが増えています。
 行政は「まだ年齢が若いから働ける」などの理由で、医療費の軽減や生活保護の受給を認めません。「がんばって税金を払っているのに、病院にもかかれないなんておかしい」と患者さんたちは怒っています。
 今後、医師や看護師、栄養士など各スタッフと連携し、総合的にフォローできる体制づくりが必要です。Aさんや中断している患者さん宅の訪問や、カンファ レンスへの参加など、ソーシャルワーカーの立場からも積極的にアプローチしていきたいと思っています。

(民医連新聞 第1415号 2007年11月5日)

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