民医連新聞

2007年11月19日

第三者機関 医療事故の再発防止・患者救済もとめて(5) 全日本民医連第三者機関プロジェクト オーストラリア視察から(1)

最先端の死因究明制度があるというオーストラリア・ビクトリア州(州都メルボルン)を視察しました(〇七年三月四~一〇日)。
 同州には、イギリスのコロナー制度(既報)を土台にしたユニークなシステムがあります。その中心はビクトリア法医学研究所(VIFM)です。
 人口約四八〇万人の同州。年間死亡者数約三万人のうち一〇~一五%、約五〇〇〇件が異状死としてコロナーに届け出され、その八割約三〇〇〇件がVIFMで解剖されます。
 医療関連死は年間約一五〇〇件発生し、七~八割が解剖されるなど驚異的です。八体の解剖が同時にできる設備とスタッフを有し、全遺体の全身CTを撮ります。法医学と臨床医学の力で「死」を分析しています。
 コロナーは医療上の知識を十分に持っているわけではなく、その弱点を補うためVIFMの中に「臨床連絡サービス」(CLS)がつくられました。医療関連 死の死因究明のため、コロナーや医師、看護師らのチームが医学的検討をします。そして病院に対し、事故予防やシステム改善の提言をフィードバックします。 これは司法、医療双方の側から支持され成功しています。
 CLSが扱う年約五〇〇件のうち、最終的にコロナー法廷に回るのは五〇件程度です。これらは再発予防の提言に役立てます。
 コロナー制度の目的は、あくまで死因究明と再発防止なので、個人の過失の有無を判断したり、責任追及は原則としてしません。「真実が明らかになれば、責 任も自(おの)ずと明らかとなる」という考えが貫かれています。第三者機関をつくる上では、その理念こそ最も重視すべきだと思います。

(民医連新聞 第1416号 2007年11月19日)

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