民医連新聞

2007年12月3日

相談室日誌 連載252 福祉事務所の怠慢な対応に怒り 大出 珠江

Aさん(四〇代・男性)は母と二人暮らしで、生活保護を受けていました。アルコール依存症で、約二年間専門病院に入院したあと、脊髄小脳変性症のリハビリと在宅退院を目的に、当院に転院しました。
 入院して一カ月後には、歩行器を使って何とか歩けるようになりました。日常生活では車イス自立がリハビリのゴールとなったので、福祉事務所の担当者に連 絡をとりました。しかし、「今までのアルコール歴を考えると、退院後にAさんが望むアパートで一人暮らしは難しいのでは?」との返事でした。
 そこで、Aさん、兄、病院スタッフ、前の病院のソーシャルワーカー、担当者が集まってカンファレンスをしました。Aさんは入院中に飲酒することなく、リ ハビリをがんばっていることを何度も伝えました。すると「在宅サービスを使用しながら、一人暮らしが可能では」という方向になりました。
 ところがAさんは以前、いっしょに暮らしていた母に酒を買いに行かせることもあったので、「母とは別居すること、母は兄が扶養すること」という条件つきでした。
 しかも、担当者は「Aさんが一人暮らしをするアパートの家賃は、五万三七〇〇円以内にすること」を条件に加えました。しかし、母は高齢で引越しをしなけ ればならないことでうつ的になり、Aさんが車イスで生活できるようなアパートも、兄が一生懸命探しましたが五万円台ではみつかりません。
 私は、担当者に「単身者でも障害がある場合、六万九八〇〇円まで基準が上げられる。兄が母を扶養することで、母とは世帯分離ができる」と再三交渉しましたが、まったく話がすすみません。
 今度は係長に直接交渉しました。そうすると、家賃は六万円台でよいことになり、母は体調も悪いので、すぐに引越しはしなくてもよいことになりました。
 一人暮らしを希望するAさんの病気は、進行性の難病なので、私たちも早く退院して在宅生活を少しでも長く送ってほしいと考えています。それなのに、入院 して四カ月たった今も、まだアパートが見つかっておらず、退院もできません。福祉事務所の怠慢な対応に腹が立ってしかたがありません。

(民医連新聞 第1417号 2007年12月3日)

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