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2014年2月17日

2014年度診療報酬改定 実質は“マイナス改定” 「7対1病床」を大幅削減/亜急性期病床の再編

 二〇一四年度の診療報酬改定の概要が決まりました。「七対一病床」の削減や亜急性期入院医療の再編など、病院・病床の構造を大きく変える重大な内容を含んでいます。全日本民医連経営部の谷口路代次長に聞きました。(新井健治記者)

 診療報酬の改定率はプラス〇・一%。四月の消費税率八%の影響を考えれば、実質はマイナス改定です。全日本民医連はこの内容に強く抗議し、再改定を求める声明を発表しています(昨年一二月二五日)。
 厚生労働省は、団塊の世代が七五歳になり高齢化率が三〇%を超える二〇二五年に向け、「地域包括ケア」を掲げて医療と介護を再編しようとしており、今回の改定はその第一歩です。
特に診療報酬と介護報酬、医療計画と介護保険事業計画の改定を同時に行う一八年を、二五年改革に向けた大がかりな提案ができる好機と捉えています。今回の 改定にも、厚労省が考える「病院から在宅へ」「医療から介護へ」の流れが如実に表れています。
 最大の特徴は「七対一」病床(患者七人につき看護師一人を配置)の絞り込み。診療報酬の高い七対一病床を減らすことで、医療費の削減を狙っています。
 厚労省は(1)在院日数算定要件の見直し(2)重症度、医療・看護必要度(3)在宅復帰率などのハードルを設け、約三三万床ある七対一の急性期病床を一 八万床に削減するつもりです(今回の改定では九万床を削減)。病床数全体を現在の“ワイングラス型”から、二〇二五年には“砲弾型”へ変更しようとしてい ます()。
 民医連で七対一を取得している病院は五七病院ですが、多くの病床で基準を維持できなくなる可能性が。取得できなければ入院基本料が下がり、現状の看護師体制を存続できません。
 中でも厳しく要件が設定されているのは重症度、医療・看護必要度で、基準を満たす患者の割合が一五%に満たない場合、七対一から外れることになります。 民医連の中でも既に、七対一の病床数を減らす検討を始めた病院もあります。

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主治医機能を強化

 今回の改定は、急性期病床の受け皿になる亜急性期病床の再編も特徴です。厚労省は「地域包括ケアを支援する病棟」を新設して、亜急性期入院医療管理料を 廃止。「地域包括ケア入院医療管理料1、2」を導入し、(1)急性期病床からの患者受け入れ(2)在宅等にいる患者の緊急時受け入れ(3)在宅への復帰支 援などを要件に点数を決めます。
 民医連に多い二〇〇床未満の病院や診療所の「主治医機能」の強化も図ります。(1)服薬管理(2)健康管理(3)介護保険制度の理解と連携(4)在宅医 療の提供及び二四時間対応を要件に、これまで以上に手厚い診療報酬をつける予定です。主治医への定額報酬として「地域包括診療料」の導入が検討されてお り、在宅療養支援病院と診療所のハードルを高くしています。
 また、年間の緊急往診や看取りの数に基準を設定するなど、機能強化型在宅療養支援病院と診療所の要件の厳格化も提案されています。それ以外の診療所が対象となるのは「地域包括診療加算」です。

消費税増税で赤字急増

 消費税率八%で事業所の経営はますます厳しくなります。二〇一二年度の全日本民医連経営実 態調査を見ると、一五五法人合計で経常利益は約一一〇億円。控除対象外消費税は、現状の五%で約七三億円を負担していました。消費税五%でも三二法人(全 法人比二一%)が赤字です。このまま何もしないで推移すれば、八%で五八法人(三七%)、一〇%で七五法人(四八%)が赤字になる計算です。
 経営が困難な法人の特徴は(1)病院の赤字構造が多年にわたり改善できず、診療所等の収益でもささえきれなくなるパターン(2)診療所の患者数減少、医師体制の困難により厳しくなるパターンがあります。
 今回の診療報酬改定と消費税増税に対応するために、事業所の将来像をシミュレーションし、総合的な外来戦略の確立と連携強化をはかりましょう。病床再編 にあたっては自院のみの対応でなく、地域でのポジショニングと戦略を定めることが必要です。
 政府は「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」を今国会に提案する予定です。地域ニーズに合わせて 医療の提供体制を調整する権限を都道府県に与えるのが特徴。「病床機能報告制度」を創設し、医療機関は病棟ごとに四機能(高度急性期、急性期、亜急性期、 慢性期)を報告、これに基づいて都道府県が病床数を制限します。上からの病棟・病床機能の規制です。
 地域で必要とされる病床機能を踏まえたうえで自院の役割を明確にするため、地域医師会や近隣病院と議論や懇談をしましょう。

(民医連新聞 第1566号 2014年2月17日)

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