国民のみなさま

2014年2月17日

みんいれん60周年(診療所) つながって存在感きらり いのち守る拠点として 栃木・宇都宮協立診療所

 民医連六〇周年シリーズ、最終回は診療所。「貧しい人たちに医療を」と生まれた無産者診療所をルーツにする民医連の原点でもあ り、高齢化する地域で人々が生きぬく拠点として新たに期待がかかっています。病院は持たず、診療所が二カ所という栃木民医連の宇都宮協立診療所(一九病 床、宇都宮市・栃木保健医療生協)を取材しました。活動のキーワードは「連携」です。(木下直子記者)

 宇都宮協立診療所では二〇一二年八月、経済的困難を抱えた患者さんの医療費負担を減免する 無料低額診療事業(以下、無低診)を、同じ法人の生協ふたば診療所とともに始めました。この一年半足らずで、一〇代から九〇代までの約三〇人が制度を利 用、飛び込みの相談も入るようになりました。

■無低診に飛び込む相談

 取材当日も、昨年末に相談を受けた人の生活保護受給が決まったとの連絡が。宇都宮市外に住まう男性です。発語できなくなるなどの症状が出ましたが、無保 険状態だったため、受診もせず二〇日近くがまんしていました。離れ住む娘さんが心配し「無保険」「診療」の言葉でインターネット検索し、駆け込んできた ケースでした。
 「受付で女性が『無料の…無料の…』と遠慮がちに言う。もしや、と職員が気づき相談につながりました」と渡辺弘子事務長。
 男性は自営業者。東日本大震災の影響で取引が激減し、国保料を滞納。制裁で正規保険証を取り上げられ、資格証明書になっていました。診療所で対応できる 病状ではないため、居住地の病院に紹介しました。国保課に一〇〇〇円だけ支払い、短期証をもらったその足で病院へ。慢性硬膜下血腫の診断で即日緊急手術 し、命をとりとめました。病院での医療費は分割して支払うことで決着しました。

■連携しないと救えない

 「今日なんとかしなくては、という状態の方が多い」。法人で医療相談員として一手に対応に あたる小澤勇治さんは語ります。ワーキングプア、老親の年金に頼る世帯、無年金の両親を非正規の子がささえる世帯、ターミナルの状態で医療費に困っていた 人…。「医療費さえクリアすれば間に合うケースは少なく、弁護士など外の専門家の力も借りないと解決しない相談がほとんどです」。
 なお、県内で他に無低診を行っているのは済生会病院だけ。事業を始める際に懇談を申し入れ、「保健医療生協で無低診を適用した患者さんは、済生会でもそ のまま無低診で引き受ける。入院や検査が必要な方は送って下さい」という約束ができました。
 診療所の無低診第一号の患者さんは、この連携で手術を受け、復職を果たしています。
 「無低診の患者さんは、がまんにがまんを重ねてきた人たちばかりです。『お金の心配はない』と言えるのはありがたい。医療費の心配がなくなった患者さん は、他の問題に向き合う気力を持つようにもなるんです」と関口真紀所長。

■診療所だからおもしろい

 “外”の事業所との連携は無低診にとどまりません。
 医療活動では―。高齢化に加え、家族の介護力が弱くなり、在宅医療への要請は強まっています。現在、二つの診療所で計三〇〇人超の在宅患者を診ています (うち特養八〇人)。五人の常勤医で二四時間対応です。診療所の一九床でささえきれない部分は、市内の旧国立病院が「在宅医療をささえるのも私たちの役 目」と積極的に受けてくれています。
 「連携がすすむのは、何も持っていないおかげ」。関口所長は冗談交じりに言いますが、「厳しい平均在院日数に縛られ、患者さんを地域に出さざるを得ない病院にも診療所は欠かせない存在」と。
 またその病院の医師が、診療所の外来・往診を週一単位ずつ担当。保健医療生協の医師も病院の内科外来を週一単位引き受けています。さらに、同院の後期研 修医の診療所研修も受け入れ。連携は医師養成にも及んでいます。
 「病院との関係はスムーズになりました。外の医師が参加することで診療所の医療活動も活性化しています」と渡辺事務長。「診療所だからこそおもしろい」 と語る若い医師に、他の先輩医師たちも励まされているといいます。 

 「連携に民医連が関わることで、地域の医療や介護の質を変えていければ」。関口所長はこんな思いも語りました。「『良い医療・介護をしたい』という思い は、事業所が違っても共有しやすいもの。ですが、いま広がっている貧困などの社会的な困難で苦しんでいるケースに対しては皆が躊躇なく向かえるわけではあ りません。そこは民医連の出番。つながった人たちに『無差別・平等の医療』の考え方をどう広げていくか、が問われていると思います」。

(民医連新聞 第1566号 2014年2月17日)

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