健康・病気・薬

2011年12月5日

相談室日誌 連載340 他院に託したAさんの行方は 中堀知恵美(宮崎)

 二〇代のAさんは、過呼吸症状で当院に救急搬入された男性です。過呼吸の症状は、外来治療で帰宅が可能と診断されましたが、幻覚や幻聴などの精神症状があり、医師からは、その日のうちに精神科へ入院することが適切ではないか、との判断が出されました。
 Aさんは刑務所を出たばかりで、公的保険に加入していませんでした。また経済的にも困窮していたため、SWが宮崎市役所に生活保護の代理申請に行きました。
 市役所側はAさんが出所したばかりであることを理由に、生活保護の申請に難色を示しました。交渉のあげく申請書を手にした時には、夕方になっており、そ の日の提出に間に合いませんでした。さらに、この日は金曜日だったため、次に窓口が開くのは三日後の月曜日。提出日がずれると保護の適用もずれてしまいま す。月曜日に申請しても金曜日に遡って適用させるよう交渉し、市の了承を取りました。
 一方、病院では事務職員や看護師がAさんに精神科への入院をすすめましたが、納得されませんでした。そして、持っていたハサミで自傷行為を起こし、医師 が救急車に同乗して公立病院の精神科へ搬送。同日に入院となりました。
 そのため、生活保護の申請は公立病院のSWへ引き継ぐことになり、「月曜日には必ず持って行って下さい」とお願いしました。
 月曜日に公立病院に「生活保護申請書は持って行きましたか?」と確認すると「Aさんが退院を強く希望したので、本日退院しました。申請書は本人に持たせ ました。持って行ったんじゃないでしょうか。生活保護の申請のことは、事務課長に聞いてください」といった調子。事務課長の対応も本人任せの状態でした。
 市の窓口にもAさんの来所を確認すると「来ませんでした。申請書が提出されませんでしたので、今回の医療費は本人に一〇割請求して下さい」と言われまし た。その後もAさんの行方は分からず、当院の医療費は、公立病院の入院費とともに未収金のままとなっています。
 今回のケースは、公立病院の考えられない対応に憤りを感じるものでした。

(民医連新聞 第1513号 2011年12月5日)

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