健康・病気・薬

2014年3月3日

副作用モニター情報〈411〉 サムスカ錠による高ナトリウム血症

 トルバプタン(製品名:サムスカ錠)が外来で投与され、重篤な高ナトリウム血症と意識障害をきたした症例について報告します。
 トルバプタンは非ペプチド性のバソプレシンV2受容体拮抗薬で、2010年12月に心不全への体液貯留を効能効果として15mg製剤が発売されました。 2013年6月に7.5mg製剤が追加、同年9月に肝硬変への体液貯留の効能効果も取得しています。他の利尿剤で効果が不十分な症例に、入院で血清ナトリ ウム濃度の測定下での開始・再開が必要な薬剤です。
 2013年10月には日本循環器学会と日本心不全学会が「日本での承認後3カ月で重篤な高ナトリウム血症(血清Na値160mEq/L以上)もしくは中 枢神経症状(意識障害、けいれん)が8例報告された」として、合同で「バソプレシンV2受容体拮抗薬の適正使用に関するステートメント」を発表していま す。
症例)70代後半男性
 心不全、高血圧、心房細動、高尿酸血症、胃潰瘍、認知症の治療薬服用中。心不全が悪化し近医を受診。外来でサムスカ錠15mgが処方された。ショートス テイ先で1日1回3日間服用。服用中は多量の排尿、精神錯乱状態、多量の飲水あり。その後、呼びかけへの反応が鈍くなり中止2日後に救急搬送された。入院 時電解質濃度(Na:167、K:4.4、Cl:127)。5%ブドウ糖などの輸液療法と電解質補正およびフロセミド注投与などの治療により4日後には会 話可能となり意識障害は回復。7日後には電解質濃度も改善し(Na:144、K:3.7、Cl:108)脱水症状もなくなった。

*        *

 今回の症例は、入院下で投与すべき薬剤を、近医の研修医が許可なく外来処方した結果、急激な血清ナトリウム濃度上昇で意識 障害をおこした症例ですが、添付文書の投与量の記載にも問題がありそうです。文書では心不全の場合15mgを1日1回投与とあり、「血清ナトリウム濃度が 125mEq/L未満の患者、急激な循環血漿量の減少が好ましくないと判断される患者に投与する場合は、半量(7.5mg)から開始することが望ましい」 とあるだけです。
 前述の合同ステートメントでは、「初期投与量を7.5mgとし、状況により適宜増減する」「高ナトリウム血症の出現を防ぐために高齢者、低体重などの場 合には7.5mgあるいは3.75mgから開始する」とされており、安全に使用するためには添付文書の投与量の改定も必要だと思われます。

(民医連新聞 第1567号 2014年3月3日)

リング1この記事を見た人はこんな記事も見ています。


お役立コンテンツ

▲ページTOPへ