事業所のある風景

2011年4月15日

栃木/宇都宮協立診療所 有床診療所の挑戦

医師のいない診療所

 1975年、群馬民医連の支援で19床の有床診療所、宇都宮協立 診療所が開設された。重装備の診療所で旺盛な医療活動を展開したが、過大な初期投資や医療経営に対する誤った考えなどから累積赤字が積み重なり、1981 年に医師が退職し、医師のいない診療所となってしまった。
 それから2年間、全国の民医連や民医連出身の地域の医師による医師支援が続いた。1983年に卒後6年の青年医師だった天谷静雄医師(現県連会長)が宮 城民医連から移籍し、本格的な立て直しが開始された。やがて二人目、三人目の医師が加わり、1998年に念願の二つ目の診療所を建設。2003年には両診 療所で4人の常勤医師体制となり、2004年に現在の地に宇都宮協立診療所の新築移転をなしとげた。

地域を守る医療連携

 宇都宮市は人口50万人を超える北関東最大の都市で、餃子が名物 だが、ジャズとカクテルの街としても売り出している。診療所は市内最大の公営団地の中央にある。団地の建物は老朽化し空き家も目立つ。高齢者の一人暮らし や生活困難を抱えた方々も少なくない。進行した病状で受診したり、生活や介護の困難が極まって相談に来る方が後を絶たない。「気になる患者さんをフォロー し続ける」を合言葉に、電子カルテでのリスト化、毎週のカンファレンスでの検討や訪問活動など、全職員でのフォローを進めている。
 栃木にはセンター病院がないが、近くの国立病院機構栃木病院と緊密な連携をとっている。宇都宮協立診療所からの紹介患者が最も多いとのことで、医療連携 室とは電話一本でのスムーズな連携をつくりあげてきた。患者の家の大掃除を連携室のスタッフと一緒にやったこともある。医師の交流もある。4月から栃木病 院に赴任する若手の内科医が診療所の外来と往診もやりたいとの希望で、宇都宮協立診療所の診療単位を提供することになった。

地域の中での有床診療所

 現在、電子カルテで2診療所と訪問看護ステーション、介護施設、各医師の自宅とを結び190人を超える在宅患者や、施設入所の方を24時間体制で支えている。末期がん患者の在宅緩和ケアや非がん患者の尊厳を守る終末期医療にも積極的にとりくんでいる。
 有床診療所は経営の困難さから次々と姿を消しているが、身近な入院施設として有床診療所が地域の中で持つ意義は大きい。中小病院の困難と在宅医療の重要性が高まる中で、その存在があらためて注目されている。
 2010年4月、自治医大の義務年限を終了した青年医師を迎えて県連は5人の医師体制になった。4月からは医師による医学生対策の時間もつくり、栃木民医連の新たな発展に向かって前進していきたい。

宇都宮協立診療所 所長 関口真紀)

「民医連事業所のある風景」 『民医連医療』2011年4月号.No.464より

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