介護・福祉

2014年3月3日

相談室日誌 連載366 地域生活ささえる退院支援 介護保険制度改悪に反対を 宮﨑由香(愛媛)

六〇代のAさんはアルコール依存症で当院に通院中の男性です。大手企業に就職し、高い営業成績を収めていましたがリストラされ、子会社に勤務していました。その頃に離婚し、認知症の母親との二人の生活が始まりました。
 毎日、母親の食事や介護をがんばっても「ろくな食事をさせていない」と兄弟から責められる日々。代々続いてきた自宅の畑作業や、朝早くからの仕事、加え て自宅のローンの支払いがさらにAさんを苦しませることになりました。
 朝早くからの仕事のため、「早く寝付きたい」「母の介護や色々なしんどさから離れてほっとしたい」という思いから飲酒量が増え、数年前に連続飲酒状態に なっていたところを母親を訪問したヘルパーが発見。無料低額診療事業をする当院につながり、入院となりました。
 退院後、数カ月は断酒ができましたが、その後再び飲酒が問題で入院に。入院中には当院で行っているアルコールリハビリテーションプログラム(以下、 ARP)に参加しました。Aさんの自宅のある地区の社会福祉協議会とも協力しながら、退院支援を行いました。
 退院後は障害福祉サービスでヘルパーの利用、福祉サービス利用援助事業での金銭管理、ARPに継続的に参加し、現在断酒して八カ月になります。Aさん は、「毎日人と会うのに飲んだ姿は見せられない」と笑顔で話し、アルコール依存症の理解も深めつつあります。
 入院中から退院支援をすすめることの大切さと、地域のつながりの中で生きるための支援をAさんから学びました。
 また、介護保険制度の問題についても考えました。介護保険は一割の利用者負担があるため、利用するサービスがその人に必要かどうか、ではなく、支払える 金額に左右されてしまいます。施設入所するにしてもすぐに入れる所は、月額一五万円以上かかります。Aさんの場合もお母さんの介護が大変でも、入所に必要 な金額を払うことはできませんでした。
 介護保険をますます使いにくくする改悪がすすめられようとしています。事例を通して改悪に反対していくことの必要性を感じています。

(民医連新聞 第1567号 2014年3月3日)

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