事業所のある風景

2011年5月15日

滋賀/膳所診療所 有床診療所の挑戦

開設40周年を迎えて

 大津市は琵琶(びわ)湖の南西端に沿って位置する滋賀県の県庁所 在地で、西側は京都市に隣接しています。江戸時代には東海道五十三次中最大の宿場として栄えました。現在は人口が33万人を超え、2009年4月に中核市 となりました。「膳所(ぜぜ)」の地名は、平安時代に「魚介類を朝廷の食膳に納める所」とされたことに由来します。徳川家康が関ヶ原の合戦の後はじめて造 らせた膳所城の跡地公園、近江や湖南の風光を愛した松尾芭蕉が遺言して葬られた義仲寺などが近くにあります。

働くものの診療所として設立

 膳所診療所は1971年3月、滋賀県初の民医連診療所として誕生しました。設立趣旨書に、当時の滋賀県は労働災害が全国1位で、腱鞘炎などの職業病で悩まされる人が多く、「働くものの立場にたつ診療所がほしい」と書かれています。
 近くには開業医が多く市民病院や赤十字病院もありますが、開所から半年後には「患者一日140人、息つくひまもなし」と記録があります。当時、周辺には 被差別部落と在日朝鮮人の集落、紡績工場などがある地域で、診療所として地域の人権運動へ参加し、滋賀医科大学の協力で労災職業病外来を開設するなど地域 に貢献してきました。職業病外来は現在も県内だけでなく岐阜や愛知からも来院があり、労働者への貴重な役割を担っています。

「膳所診療所ならなんとかしてくれる」

 1992年の全面改築の際には、地域から建設費用の約半分にあた る1億3500万円が集まり、市の入浴事業やデイケアを開始して、往診や訪問看護の在宅医療に加え、介護分野にも力を入れました。その後、在宅ケアステー ション陽だまり、認知症対応デイサービスほっこりを近接地に開設し、2005年には精神科を開設しました。2009年末には大津市ではじめて無料低額診療 事業の認可を受けて以来、これまで25人が利用され、最近も「膳所診療所ならなんとかしてくれる」と知人から聞いた80歳の方が受診相談にこられ生活保護 につながるなど、地域での期待の高まりを感じています。

友の会と力をあわせて

 今年3月に膳所診療所は開設40周年を迎えました。4月からは常 勤内科医が3人、精神科医1人と過去最高の医師体制になり、滋賀民医連として空白地への第4診療所の建設運動が始まります。また、新しい介護事業や診療所 の新築移転などの計画も検討しています。滋賀の民医連として40年の活動実践と全日本民医連新綱領の理念をあらためて職員の確信にするとともに、地域の ニーズを問い直し、これからさらに地域でなくてはならない存在となるよう、友の会と力を合わせて奮闘する決意を新たにしています。

膳所診療所 事務長 加藤 健司)

「民医連事業所のある風景」 『民医連医療』2011年5月号.No.465より

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