副作用モニター情報(薬・医薬品の情報)

2012年2月6日

副作用モニター情報〈366〉 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)

 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)II型と思われる報告が、この1年間に4例ありました。HITには軽度の血小板減少を伴い自然回復していく非免疫 的機序の「I型」と、ヘパリン+血小板第4因子の複合体とこれに対する抗体(HIT抗体)の自己免疫反応による「II型」があります。
 II型は、形成された免疫複合体が血小板を活性化し、血小板減少、トロンビンの過剰産生が起こり、動静脈血栓を発症させます。出血症状はまれで、低分子ヘパリンより未分画ヘパリンの方が発症リスクは高まります。
 血小板減少はヘパリン投与5~14日後に始まり、投与前値の50%以上の減少、あるいは15万/μl以下とされています。今回の報告例も同様の経過であ り、血小板数は3.6万~7.4万/μlまで低下していました。呼吸困難や胸痛、四肢の腫れなど自覚症状の訴えはありませんでしたが、血小板減少から HITを疑い、HIT抗体検査を実施しています。
 治療としてはヘパリンを中止し、血栓リスク回避のために抗トロンビン剤アルガトロバンで対応します。ヘパリン中止後1~2日で血小板数は回復してきます が、適切な診断、治療がなければ死亡率10~20%と言われており、ヘパリン開始後の血小板数の定期的確認を必ず行います。また100日以内にヘパリンを 使用していた場合も、急速発症例のチェックのため再検査が必要です。
 今回、報告された4例中3例は透析時のヘパリン使用によるもので、1例で回路内凝固が形成されていました。

(民医連新聞 第1517号 2012年2月6日)

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