事業所のある風景

2012年3月15日

東京/おおくぼ戸山診療所 時代を先取りして…

都会の真ん中で…

 当診療所は新宿区大久保2丁目にあります。新宿区の人口は31万 8000人、大久保地域だけで2万4000人の大都会の中にあります。となり町は歌舞伎町です。2001年に「新宿に民主診療所を作る会」ができ、診療所 建設運動が開始されました。当初、東京勤労者医療会から医師を派遣する予定でしたが、医師体制が整わず、初代所長には、静岡民医連から櫻井正美医師(現静 岡・米山町クリニック所長)を招へいし、立ち上げにご尽力いただきました。
 現在、友の会メンバーは約800人、立ち上げ時からの会長が交代されたばかりです。
 標榜科は、内科、小児科、呼吸器科。基本的には常勤所長の1人体制ですが、往診などもあり、曜日別に非常勤医師に協力してもらっています。曜日別のアン ケートでも、常勤、非常勤に関係なく診療満足度は高く、医師の力だけではなく、スタッフの総合力による評価をいただいています。

大久保はこれからの日本の縮図

 当院から明治通りを挟んで、都営住宅戸山ハイツがあります。ここは1967(昭和42)年に完成した総戸数3000戸の大規模団地で、このころ建てられたほかの団地と同様に高齢化が進んでおり、数年前の調査ですでに高齢化率は50パーセントを超えています。
 ここで育った子どもたちは独立して郊外に居を構え、それぞれに家庭を持っています。2世帯での居住が原則不可となっているため、親が高齢になり、認知 症、身体障害などを持つようになっても、それぞれの家庭の事情から親族介護ができない場合が多く、認知症独居、お互い90歳超での「老老介護」の家庭、あ るいは同居していた子が先に死亡し、老人独居になったなどの家庭もあります。それぞれケアマネジャーなどを通じて相談にのっています。
 また、「OOKUBO」は全国的に見ても一番ホットな街になっています。韓流で有名ですが、韓国系だけでなく、中国、フィリピン、タイ、インドなどアジ ア全体から人が集まり、それぞれのコミュニティーが形成されています。この「内部」に位置する診療所なので、たとえば日本語の話せない母や祖父母を子や孫 が連れてきて、診療をすることがあります。都内といえどもほかの地域では経験できない風景だと思います。
 私自身、医学生のころは海外診療を志向していたこともあり、こうした多国籍の診療はとても楽しく、やりがいのある場だと感じています(スタッフは大変ですが)。
 当診療所が経験している、高齢化の進行と海外コミュニティーとの共存は、まさにこれからの日本が迎える時代を先取りしているものと実感しています。ここ での診療ノウハウが、これからの日本のさまざまな地域に役立つものとなるでしょうし、いろいろな形で、そうしたものを公開・共有していく役目が当院に求め られているものだと思いながら、日々診療にあたっています。
おおくぼ戸山診療所 所長 星野 啓一)

「民医連事業所のある風景」 『民医連医療』2012年3月号.No.475より

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