事業所のある風景

2012年4月15日

沖縄/やんばる協同クリニック 豊かな大自然が残される地域で

 やんばる協同クリニックは、沖縄本島北部に位置する名護市で、2011年4月1日にオープンしました。人口約6万人の名護市は北部市町村の中核的 な存在で、北部地域の人口約12万人の半分が集中する市です。北部地域は豊かな大自然が残される地域で、診療所の名前の由来でもある「やんばる(山原)」 とも呼ばれています。やんばる(山原)は沖縄本島の約半分の面積を持つ広大(日本全体では約0.1パーセントくらいですが)な地域で常緑広葉樹が生い茂 り、ヤンバルクイナやノグチゲラ、ケナガネズミなどの多くの貴重な固有種が生息していることでも有名です。

組合員は「したいひゃー(やったー)」と

 「やんばるに診療所を」との議論は1995年の米兵による少女暴 行事件に端を発して「沖縄から米軍基地をなくせ、もうこれ以上の基地被害はごめんだ」という世論が高まるなか、当時の日米両政府が「沖縄の負担軽減」とい う言葉を利用して、危険な普天間基地を名護市辺野古に移設しようと策動するなかで始まりました。議論が開始された当初からかかわっている医療生協・名護支 部の方々は、開設に伴い「したいひゃー(やったー)」という気持ちでいっぱいだと語ってくださいました。
 現在、やんばる協同クリニックは午前の外来診療と午後の訪問診療を中心に医療活動を行っています。北部地域は多くの開業医がいますが、大きな病院は医師 会病院と県立病院だけです。入院患者などは前述した2つの病院と連携しながら対応しなければなりません。しかし、近年北部地区の医師の確保が思わしくな く、県立病院などは入院制限や外来診療の縮小を余儀なくされている現状があります。私たちの事業所を開設するにあたり、2つの病院と懇談しましたが、「入 院患者の4割は在宅での療養が可能な方たちだと考えているが、退院させることができない。在宅で療養する(看護する)環境整備ができていない」とのこと。 そうした意味でも私たちの医療活動は非常に心強いとのことでした。

「民医連・医療生協の事業所があってよかった」と言ってもらえるように

 北部地域の主要な産業は、農漁業や観光業で人口1人あたりの年間 収入は188万1000円で、沖縄県の平均324万円の58パーセントしかありません。失業率も高く、若い世代は那覇などの都市部に移り住んで、過疎化が どんどん進行しています。地域ではお年寄りの独居も多く、在宅での療養が必要になり、訪問診療もさらに需要が増えていくことが予想されます。そのようなと きに、「民医連・医療生協の事業所があってよかった」と言ってもらえるように、職員一同、精一杯頑張る決意です。
 片道30分から40分かけて出かけていく往診先、目の前に青く澄んだ海と裏手にはさまざまな動植物が生息する山、木造の建物に沖縄瓦が乗っかっている患 者のお宅へ今日もおじゃましています。
(やんばる協同クリニック 事務長 知念 毅)

「民医連事業所のある風景」 『民医連医療』2012年4月号.No.476より

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